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テレビの前のあなた、この1週間、いかがお過ごしでしたか。
プロデューサーのゲンカイモン です。
SNSなどを通じ情報が瞬時に世界を駆け巡り、無料でそれを手にできる現代社会はとても快適です。
一方、異なる価値観が激しく衝突、国民同士で深い分断を生み出しやすい時代でもあります。
このような時代を生き抜くために鍵となるスキル、それがクリティカルシンキング であると私は確信しています。
本日は社会の基本的な保障から取り残されたマイノリティたちの心の叫びであり、伝統的家族観と婚姻制度の在り方を根本から問い直すテーマを取り上げます。
内閣府が毎年まとめている「男女共同参画白書」 令和8年発表の最新データを見て下さい。
未婚率の上昇、働き方の多様化など従来の社会構造との違いがよくわかります。
一方、男女間賃金などの性差による格差の解消は変わらず進んでいません。
社会構造も大きく変化している。未婚者や単独世帯が増え、女性の就業率は上昇し、令和7(2025)年には、15 ~ 64歳女性の約4分の3が就業している。
共働き世帯数は専業主婦世帯数の 3.5 倍となり、妻がフルタイムで働く共働き世帯数も増加している。
一方で、男女間における仕事と家事・育児・介護の分担の偏り、女性に多い非正規雇用、職種の偏りなどを背景に、男女間賃金格差は依然として存在する。
女性の所得向上・経済的自立は、男女の置かれた状況の違いなどを背景に生じている様々な困難の解消に資すると同時に、個人が尊厳をもって生きることにも深くかかわる重要な課題である。
※「同白書令和8年版 学び直しの現状と分析」 から一部引用
旧来の社会情勢とは異なる、新しい時代の幕はすでに開いている。
本日のヒルガチが、あなたのクリティカルな思考を深めるきっかけになると信じています。
それでは我らがMC、田川福三郎に進行をバトンタッチしましょう。
田川さん、後は頼みました。
最後まで宜しくお願いします。
田川
ゲンカイモンさん、お任せ下さい。
1週間のご無沙汰です。
ジャーナリストの田川福三郎です。

田川 福三郎(たがわ ふくさぶろう)
ジャーナリスト歴60年、現在ヒルガチ専属MC。ゲンカイモンが最も信頼を置く頼れる相棒。番組をまとめることが使命と信じる熱い男。事前にゲンカイモン、アシスタント大鷹と入念に打ち合わせを行い、理論武装した上で番組へ臨んでいる。3人目のパネリストとして鋭く切り込む。
深い議論を交わす、1週間で最も熱い金曜日がやって参りました。
本日のテーマとその論点を発表! 難題に挑む二人のパネリストの思想
田川
さっそく本日のテーマを発表しましょう。
同性婚の法制化で結婚観はどう変わるのか! 社会への影響と婚姻の歴史的変遷
昨今、司法の場や国会の場、そして私たちの日常生活の中でもこの問題は大きな関心を集めています。
同性婚を法的に制度化するべきか否か。
どうせいこん
法律上の性別が同じ2人(男性同士、または女性同士)が結婚すること。2026年現在、世界では39の国と地域で合法化されているが、日本はG7の中で唯一法制化されていない。
主要7カ国首脳会議プラス欧州連合(EU)
- Canada:カナダ
- France: フランス
- Germany:ドイツ
- Italy: イタリア
- Japan: 日本
- United Kingdom:イギリス
- United States:アメリカ
これは単なる個人の権利の問題にとどまりません。
社会インフラとしての結婚制度、そして伝統的な家族観をどのように評価し、未来へ向けてどうアップデートしていくべきか、極めて壮大な問いでもあります。
今、このテーマを真っ正面から議論し、多様な価値観の根底にあるものを見つめ直すことは、民主社会と私たち国民の成熟度を測る絶好の試金石となるでしょう。
本日もこの重層的で複雑なテーマに挑むにふさわしい、最高の知性をお招きしました。
それでは、本日熱い議論を交わしていただくパネリストをご紹介します。
まずはお一人目。
同性婚の法制化は基本的人権の保障という観点から、もはや避けては通れない世界的な潮流だと主張する、同性婚に対し肯定的立場の代表者と言えばこの人、多喜川 慎一さんです。
多喜川
多喜川です。

多喜川 慎一(たきがわ しんいち)
・最終学歴:帝南大学大学院法学政治学研究科
・専門分野:憲法学、ジェンダー法学
・博士号:法学博士
・著書:『多様性社会と人権の再構築』他
本日はよろしくお願いいたします。
同性同士の結婚の是非は法制度の問題にとどまりません。
国民自身がいかに他人の多様な生き方を包摂できるか、寛容の心、すなわち人としての成熟度が問われています。
同性婚法制化を推進する立場から、論理的かつ建設的な議論を展開したいと思います。
田川
多喜川さん、どうぞ宜しくお願いします。
続いてお二人目。
結婚制度が社会の安定のために機能してきたのは歴史的事実であり、その改変は慎重に進めるべきであると主張する、同性婚の法制化に否定的立場の急先鋒、佐久間 龍太郎さんです。
佐久間
佐久間と申します。

佐久間 龍太郎(さくま りゅうたろう)
・最終学歴:新日本大学大学院社会学研究科
・専門分野:家族社会学、日本法制史
・博士号:社会学博士
・著書:『イエ制度の社会学:持続する日本の家族観』他
本日はヒルガチにお招きいただきありがとうございます。
結婚制度は単なる個人の愛情の証明ではありません。
長い歴史の中で社会を安定させるために貢献してきた精緻なシステムです。
制度改変による社会に与える具体的な影響について、主に私の専門分野である社会学の視点から提起したいと思います。
田川
おふた方ならではの議論を期待しています。
それではこの番組の良心、大鷹さん、本日の論点フリップの提示をお願いします。
大鷹
はい、田川さん、かしこまりました。

大鷹 純 (おおたか じゅん)
ヒルガチ専属アシスタント。徹底的なファクトチェックとパネリストとの出演交渉に奔走する影の立役者。田川、ゲンカイモンとは制作会議で激論を交わし合う同志。常に冷静沈着な仕事ぶりだが、実は誰よりもヒルガチを愛する熱血漢。初回放送 では感極まって号泣する純粋な一面を見せ、視聴者の心を鷲掴みにする。
本日のテーマ、同性婚の法制化について考えられる主なメリット(肯定的側面)、デメリット(否定的側面)をそれぞれ5つに整理しました。
まず、メリットからご紹介します。
- 基本的人権の確立
性的マイノリティの基本的人権が保障され、憲法が定める法の下の平等が実質的に達成できる - 多様な人材の確保
誰もが安心して働ける心理的安全性が高まり、優秀で多様な人材が集まることで企業の競争力向上が期待できる - 法的不利益の解消
家族として認められないことで生じていた、パートナーの医療同意や遺産相続に関する手続き上の相当者の立場が保障される - 国際的評価の向上
G7をはじめとする国際社会において、人権と多様性を尊重する国としての信頼が高まり外交的地位の向上が期待できる - 寛容な社会の実現
多様な生き方や価値観が広く受容されることで、すべての国民が生きやすさを感じられる社会の構築が期待できる
次はデメリットについて。
- 伝統的な家族観への影響
日本で長く培われてきた伝統的な家族のあり方の変化に対し、戸惑いや摩擦を生む懸念がある - 制度改変に伴うコスト
戸籍制度や税制、社会保障制度など、従来の異性婚を前提とした複雑な行政システムを改変する費用がかかる - 社会的な分断の恐れ
憲法24条の「両性の合意」という文言の解釈を巡って法理的な対立が深まり、国民間の分断を招くリスクがある - 少子化対策への逆行
同性間の婚姻では自然な生殖が伴わないため、少子化対策に逆行するという懸念の声がある。 - 法制度上の混乱
既存の異性間婚姻を前提に設計された親権や共同親権のあり方に適合しないケースが生じ、法的混乱が予想される。
田川さん、本日の論点は以上です。
田川
メリットとデメリットが複雑に絡み合っているのがよく分かります。
それでは早速、おふた方にヒルガチしていただきます。
同性婚を巡る分断の深層! 疑うべき道徳の相違
田川
まず初めに、同性婚の法制化をめぐりなぜ激しい対立が生まれるのか、その心理と現状認識から始めようと思います。
SNSやメディアを見ていると、同性婚をめぐる議論 は感情的なレッテル貼りに終始している印象があります。
「同性婚を認めないのは憲法違反であり不当な差別だ!」
「夫婦と子どもを前提にする伝統的家族観が崩壊する!」
肯定側と否定側、双方の主張が平行線をたどるケースが散見されますが、議論が噛み合わない根本的な原因をどのように分析されますか。
多喜川
この分断は差別意識から発生しているわけではなく、互いが依拠している「正義」や「道徳」が異なっているのが原因です。
心理学や倫理学の分野で支持されている「道徳基盤理論(モラル・ファウンデーション理論)」という概念をご存知でしょうか。
これは人間の道徳的判断が6つの基盤から成り立つとする理論です。
- 保護(Care)/ 危害(Harm)
- 公正さ(Fairness)/ 欺瞞(Cheating)
- 内集団への忠誠(Loyalty)/ 裏切り(Betrayal)
- 権威への敬意(Authority)/ 破壊(Subversion)
- 神聖さ(Sanctity)/ 堕落(Degradation)
- 自由(Liberty)/ 抑圧からの解放(Oppression)
※ 日本大学大学院 総合社会情報研究科 青山 美樹:「道徳とは何か ? - その研究の変遷と道徳基盤理論の誕生」 より引用
同性婚推進派は主に「保護(他者への配慮)」や「公正さ(平等)」の基盤を重視し、苦しんでいる当事者を救うべきだと主張します。
一方、慎重派は「内集団への忠誠(集団への帰属)」や「神聖さ(伝統の尊さ)」の基盤に強く反応し、歴史ある結婚制度を守ろうとします。
この前提の違いを認識せず、互いの思想を主張するため対話が成立しないのです。
佐久間
多喜川さんのご指摘は非常に示唆に富んでいます。
社会学的な観点からも、この対立は「個人の自由」対「社会の秩序」という古典的命題の現代版と言えます。
近代以降、個人の権利は絶えず拡大してきましたが、社会というものは一定の慣習や制度、つまり「社会的ホメオスタシス」によって維持されています。
Societal Homeosutashisu
社会が外部からの変化やストレスを受けた時、元の安定した状態を保とうとする働き。ホメオスタシスの本来の意味は体内の状態(体温、血圧、血糖値など)を一定に保ち続けようとする恒常的機能のことだが、社会を人体に見立てその概念を取り入れている。
慎重派の方々が抱く不安はご指摘の通り、決してマイノリティに対する差別意識から生じているのではなく、社会の土台である婚姻制度が変革されることへの恐怖心から生まれているのです。
加えてこの問題を複雑にする要因として、「伝統的家族観への愛着」と「多様性は容認するべき」という、相反する二つの感情が一人の人間の中で葛藤していることです。
「わかってはいるけれど、受けいれるのはなかなか難しい」
慣れ親しんだ慣習を変えたくないと思うのは自然な感情でしょう。
互いに必要なのは相手が重視する「道徳基盤」を否定せず、中立的な対話を心がけることです。
SNS上での誹謗中傷は害こそあれ、建設的ではありません。
田川
なるほど。
前提となる道徳が互いに異なることの不認識が、冷静な議論を難しくしている原因ということか。
そこでお聞きしたい。
同性婚推進派の多喜川さんとして、その「忠誠心や神聖さを重んじる同性婚慎重派」に対し、どのように説明責任を果たしていくべきとお考えですか。
多喜川
重要なのは同性婚の法制化が慎重派が重んずる「伝統的な家族観」、「慣れ親しんだ慣習」を崩壊させる「侵略者」でないことを丁寧に説明することです。
目指すべき理想的な家族モデルが明確でなくなり、伝統的な家族形態における義務(妻であること、嫁であること、跡継ぎであることなど)から解放され社会的な責任の希薄化が進む。
具体例
すなわち、権利の拡大が慎重派の損失に繋がるものではないことを伝える必要がある。
逆に、マイノリティの方たちの立場を法的に保障することで社会の安定、延いては佐久間さんがおっしゃる社会的ホメオスタシスの維持にも寄与するはずです。
また、伝統は決して不変ではなく、その時代の要請に合わせ適応させながら存続していくものです。
同性婚の法制化はけして伝統の破壊ではなく、人権的見地からの制度改正です。
このことをとにかく丁寧に説明し伝えていくしかありません。
佐久間
「伝統は不変ではない」との指摘には同意します。
しかし、制度の改変スピードが国民の意識の変化や適応能力を上回った場合、そこにハレーションが生じます。
halation
周囲に悪影響を及ぼすの意。強い光の影響で撮影した写真が白くぼやける現象から派生した言葉。
結婚制度は本人同士の契約という社会的な機能だけでなく、子どもを産み育てる「出産と養育」を前提に国民の間に浸透してきました。
「神聖さ」を重んじる人々にとり「結婚制度」の変更は、単なる法律の改正ではなく、文化と伝統を書き換える行為に等しいのです。
同性婚は「出産と養育」が初めから伴わないためです。
やはり、慎重派の目には「侵略者」と映ってしまう。
それを防ぐためにも、推進派は「人権」という錦の御旗でこの問題を一刀両断にしてはいけません。
慎重派と保守層が抱く文化と伝統の喪失感、社会インフラへの影響などの実務的な懸念に対し、具体的な解決策を提示する責務があるのです。
多喜川さんが「丁寧に説明責任を果たしていく」とおっしゃったので少し安心しています。
経済界からの要請と人権問題! 世界の潮流から乖離する日本
田川
なるほど、よくわかりました。
推進派から慎重派に対する丁寧な説明が必要というところでは、おふた方の意見はピタリと一致しました。
ここからは人権と経済について論を進めたい。
日本経済団体連合会(経団連) が法制化を求める提言を発表しました。
同性婚を認めるよう経済界から強い要請が起こっています。
Web上では、企業の LGBTQ+ に対する理解や支援表明に対し様々な反響が見られます。
かつてはイデオロギーの対立軸で語られていたこの問題に、経済というリアルなお金の要素が加味された。
この現象をどう捉えるべきか。
佐久間
企業が同性婚の法制化を求める背景には、極めてシビアな経済的合理性があります。
グローバル化が進む現代において、企業にとり最大の課題は優秀な人材の確保に他なりません。
G7をはじめとする欧米諸国で同性婚が認められている現在、日本でそれが認められていないことはグローバル企業にとり、日本への赴任を拒まれるリスクの要因になり得ます。
経団連は2024年6月に「選択肢のある社会の実現を目指して」 という提言を公表、DEIの観点から多様な人材の確保と持続的な経済成長のために法整備が必要であると強く訴えています。
- Diversity
ダイバーシティ(多様性) - Equity
エクイティ(公平性) - Inclusion
インクルージョン(包摂性)
また、 一般社団法人 Marriage For All Japan が Open For Business の「The Economic and Business Case for Marriage Equality in Japan」を翻訳した「婚姻の平等が日本社会にもたらす経済インパクト というレポートがあります。
この中で、LGBTQ+ へのインクルージョンが進んでいる国ほど、企業人材戦略、経済成長、企業業績の経済的パフォーマンスが高い相関性が統計的に示されています。
オープン フォー ビジネス
多様性と受容のある社会こそが経済発展に不可欠であるという理念のもと、LGBTQ+のインクルージョン(包摂)が経済や企業の成長につながることを実証し推進する、国際的なグローバル企業の連合体
また、Williams Institute という研究所のレポート「Links Between Economic Development and New Measures of LGBT Inclusion」 では、独自開発した「Legal Count Index」を用いて分析したデータから、LGBTの包摂性と国の経済との間に統計的な正の相関があることを立証しています。
1. 経済発展との統計的関連性
LGBTに対する法的、社会的包摂が進んでいる国家ほど、一人当たりのGDPが高い傾向が統計的に確認されている。これは単に経済的余裕が権利保障を可能にしているという側面のみならず、包摂的な社会環境そのものが経済発展を促進する要因として機能していることを示唆するものである。
2. 経済パフォーマンスが向上するメカニズム
インクルージョンが経済に寄与する論理は主に以下の3点に集約される。
- 人的資本の最大化
差別的環境は個人の教育機会や就労の質を毀損する要因となる。包摂的社会は個々人が有する技能、才能、教育を労働市場において最大限に発揮させることを可能にし、結果として労働生産性を底上げする。 - 社会的コストの抑制
差別やスティグマ(社会的烙印)は当事者の精神衛生を悪化させる。これは病気やメンタルヘルス不調による医療費の増大、及び自殺による労働力喪失という経済的損失を招く。したがって、包摂的な環境の構築は、これらの社会的コストを削減する効果を持つ。 - グローバル競争力とイノベーション
グローバル企業や高度人材は、法制度が開放的かつ進歩的な国・地域を志向する傾向がある。インクルージョンは、海外直接投資(FDI)の呼び込みや、世界中から多様なスキルを持つ人材を惹きつけるための「選ばれる条件」として機能する。
3. 結論:排斥による経済的損失
差別を容認しLGBT当事者を排除する社会は、国家が持てる最大の資産である「人材」の流出(Brain Drain)を自ら招いている。したがって、LGBTの法的、社会的包摂を推進することは、特定の集団に対する単なる優遇措置ではない。国家および企業が富を最大化し、持続可能な成長を実現するための合理的、且つ戦略的な人材活用策であると結論付けられる。
※「Links Between Economic Development and New Measures of LGBT Inclusion」の原文 を一部翻訳編集
すなわち、同性婚を認めないのは倫理的にはもちろん、明確な経済的リスクであると経済界は認識し始めているのです。
多喜川
ご指摘の通りです。
補足すると、「ピンクマネー」と呼ばれる LGBTQ+ の市場での購買意欲と購買力、多様性を支持する消費者からの企業ブランドへの支持、「アライ」としての評価など経済的な波及効果は決して小さくありません。
Pink Money
LGBTQ+ をはじめとする性的マイノリティの人々が持つ高い購買力や消費意欲。
Ally
LGBTQ+ などマイノリティを理解する考え方とその支援者。同盟や支援を意味するAllianceが語源。
さらに法的な観点から見れば、現在日本各地で進められている同性婚訴訟において、複数の高等裁判所で「違憲あるいは違憲状態」との判決が出されています。
※ 最高裁判所判例検索システム で「同性婚」と入力すると確認可能
この事実は極めて重い。
司法が「現状の法制度は個人の尊厳を傷つけている」と断定し、経済界が「国際競争力の足かせになっている」と指摘しているのですから。
同性婚の法制化により「基本的人権の普遍的価値」と「国際競争力向上による経済的価値」、この2つの価値を国として尊重していることを国際社会に対しアピールできます。
法制化しない理由がみつかりません。
田川
司法と経済界、双方からプレッシャーがかかっているわけだ。
仮に同性婚が法制化された場合、体力がある大企業は社内規約の整備などで対応できるでしょう。
しかし、日本経済を支える多くの中小企業にとり、制度変更への対応は事務処理はもちろん、経済的な負担が相当大きくなる可能性があります。
佐久間
おっしゃる通り、そこが非常に重要なポイントです。
経済産業省が推進する「ダイバーシティ経営企業100選」 に選定されるような大企業は、独自のパートナーシップ制度を設ける、福利厚生を同性カップルに適用するなど、先行して環境整備が進められるでしょう。
しかし、リソースに限りがある中小企業にとり、国レベルでの法整備がないままに社内制度だけをアップデートするのは容易ではありません。
- 福利厚生制度の改定、運用コスト
・家族手当、住宅手当、結婚祝い金、慶弔休暇などの支給対象が拡大、人件費が増加する。
・就業規則や賃金規程の書き換え、社内システムの改修、関連する税務、社会保険手続きのフロー変更など、管理部門での事務的負担や外部専門家(社労士等)への相談コストが発生する。 - 社会保険制度への対応
・法制化により配偶者の範囲が拡大すれば、これまで扶養に入っていなかったパートナーが被扶養者として追加される。
・企業の直接負担(保険料そのもの)は直ちに増えないが管理コストの増大、会社独自の付加給付がある場合、その対象範囲が広がり支出増が考えられる。 - 転勤、配置転換への制約と代替コスト
従業員の転勤や配置転換は現在は柔軟に行われるが、法制化によりパートナーの権利が保護されると生活状況への配慮のため急な転勤、単身赴任の指示が難しくなる。結果、人材配置が硬直化、代替人材の確保や業務の見直しにコストがかかる。 - 制度周知とコンプライアンス対応
・新しい法律への対応の遅れは企業にとり、レピュテーションリスク(評判への悪影響)や法的リスクに直結する。
・社内での研修や、不適切な言動防止のためのハラスメント対策など、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)に関する意識改革のための研修コストが発生する。
・研修をゼロベースから企画、実施するための人的、時間的リソースが大きな負担となる。
結果、企業により待遇が異なる、新たな格差問題が生じます。
もし国が法制化に踏み切るならば、中小企業に対する税制面での優遇措置、実務的なガイドラインの提供など、きめ細やかなサポートを付随するべきです。
多喜川
ご指摘された「企業間格差」は、まさに法律がないため起きている問題です。
法制化へ進まないのは国会の不作為に他ならない。
一部の先進的な企業や自治体の努力に依存している場合ではありません。
現状、不利益を被り法的保護の枠外に置かれている人たちがいる以上、立法府である国会は速やかに議論を始め、社会のセーフティネットとしての婚姻制度を再構築する責務があります。
その場合、佐久間さんが指摘された企業への支援をセットにするのは論を俟ちません。
海外事例との比較から見えてくる同性婚法制化の現実
田川
ここからは世界の現状に視点を移したい。
すでに同性婚を法制化している諸外国において、社会はどのように変化したのか。
法制化によって懸念されていた事態は起きたのか。
それとも期待した成果が得られたのか。
多喜川
2001年に世界で初めて同性婚を法制化したオランダをはじめ、アメリカ、台湾など39の国と地域で2026年現在、同性婚が認められています。
これらの国々の数十年にわたる経緯を見る限り、慎重派が懸念していた「伝統的家族観が崩壊する」「少子化が加速する」などの事象は、法制化が直接の要因として起きている客観的データはありません。
例えば、同性婚が認められていない日本、韓国でも出生率の低下は進行しています。
| 順位 | 国 | 出生率 |
|---|---|---|
| 117位 | フランス | 1.9 |
| 130位 | アメリカ | 1.84 |
| 171位 | イギリス | 1.63 |
| 186位 | ドイツ | 1.58 |
| 185位 | カナダ | 1.58 |
| 215位 | イタリア | 1.26 |
※ G7 同性婚制度化国 合計特殊出生率 2025年
| 順位 | 国 | 出生率 |
|---|---|---|
| 208位 | 日本 | 1.4 |
| 222位 | 韓国 | 1.12 |
※ 同性婚非制度化国 合計特殊出生率 2025年
同性婚の有無よりも経済状況や働き方、子育て支援策の充実など、マクロな要因の方がはるかに大きく影響しています。
また、同性婚の法制化が性的マイノリティに対する社会的寛容性を高め、制度的偏見(ストラクチュラル・スティグマ)の緩和へと繋がり、当事者たち、特に若年層のメンタルヘルスを改善させる公衆衛生上のポジティブな成果(精神疾患者数減少、自殺率低下など)が多数報告されています。
※ 参考:精神医学ニュース https://psychiatryonline.org/doi/10.1176/appi.pn.2017.3b15
米国におけるレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー(LGBT)コミュニティは、一般人口と比較して、医療提供体制が著しく損なわれ、健康状態も悪化していることが広く知られています。異性愛中心の社会において社会的な偏見にさらされるLGBTの人々は、「マイノリティ・ストレス」と呼ばれる現象にも苦しみ、それに伴う精神的・身体的な健康への悪影響も受けています。
医学および社会科学の文献における報告によると、同性婚の法的および社会的承認は、このリスクの高いコミュニティの健康状態にプラスの効果をもたらしていることが示唆されている。
連邦法または州法に基づく結婚による恩恵によって医療へのアクセスが改善されること、そして性的少数者グループに対する制度化された偏見の影響が軽減されることから、より良い結果が期待される。
※ アメリカ公衆衛生ジャーナル より一部引用
佐久間
多喜川さんが挙げられたデータは事実です。
ただし、海外の成功例を文化的、歴史的背景が全く異なる日本にそのまま導入するとなると話は別です。
キリスト教圏における「神の前での契約」という宗教的な結婚観と、日本の「家」を基盤とするそれでは制度が内包する意味合いが異なります。
また、アメリカなどでは同性婚の法制化後、宗教的信条を理由に同性カップルへのサービス提供を「拒否する自由」が争われるなど、新たな法廷闘争や社会的分断が生じています。
法制化すればすべての問題が解決するわけではありません。
法制化による国民同士の想定される摩擦を予測しいかに緩和するか。
将来を見通す想像力が求められます。
田川
確かに、文化や歴史の違いを無視して制度だけを輸入するのは危険かもしれませんね。
諸外国の事例から、日本が教訓とすべき点はどこにあるとお考えですか。
多喜川
台湾の事例は参考になるでしょう。
少し長くなりますがご紹介します。
台湾では司法院大法官が「同性婚を認めないのは違憲」とする判断を下し「釈字第748号」を2017年5月24日に発表しました。
立法院(国会)に対し2年以内の法律制定、もしくは民放改正を命じるものです。
蔡英文(さい えいぶん)政権は当初、法制化を民放改正で行おうとしましたが反対運動が活発化、民放改正賛成派と反対派が激しく衝突、対立する事態になります。
双方が国民投票を提案、実施された結果、「民法を改正せず婚姻以外の形式で同性カップルの権利を保護すべき」とする、民放改正反対派の提案が国民投票で可決されました。
蔡総統は民放改正を断念、「司法院釈字第748号解釈施行法」という特別法が2019年5月24日に施行され、アジア初(世界では27番目)の同性婚の法制化が実現できたのです。
第1条
為落實司法院釋字第七四八號解釋之施行,特制定本法。
第2条
相同性別之二人,得為經營共同生活之目的,成 立具有親密性及排他性之永久結合關係。
第3条
未滿十八歲者,不得成立前條關係。
第4条
第二條關係應以書面為之,有二人以上證人之簽名,並應由雙方當事人,依司法院釋字第七四八號解釋之意旨及本法,向戶政機關辦理結婚登記。
第1条(立法の目的)
司法院釈字第748号解釈の施行を確実に実施するため、特に本法を制定する。
第2条(定義)
同じ性別の二人は、共同生活を営む目的のため、親密性および排他性を有する永久的な結合関係を成立させることができる。
第3条(年齢要件)
18歳に満たない者は、前条の関係を成立させることができない。
第4条(登記要件)
第2条の関係は書面で行わなければならず、2人以上の証人の署名を得て、かつ当事者双方が司法院釈字第748号解釈の趣旨および本法に基づき、戸政機関(役所)に婚姻登記を申請しなければならない。
法制化成功のポイントは反対派の懸念に対し、丁寧に対話を重ねながら妥協点を見出したこと。
例えば反対派が掲げた「民法の婚姻は男女間に限るべき」「同性婚は特別法で対応すべき」という提案が、国民投票で可決されたのが結果的に大きかった。
反対派にしてみれば「自分らの意見が通り民法を守った」という実利と勝利感の双方が得られましたからね。
その後も「特別法に結婚、婚姻という言葉を使うべきではない」などと反対派は最後まで抵抗しましたが、「司法院釈字第748号解釈施行法」という、あえて「家族」とも「パートナー」とも書かない中立的な名称にする配慮を政府は行いました。
これにより、反対派のメンツを保つことにも成功したのです。
日本においても台湾の事例を参考に、日本の文化と伝統に合わせた制度設計をゼロベースで議論していく必要があるでしょう。
道のりは険しいですが進むしかありません。
佐久間
台湾以外にも参考になる事例があります。
それは、制度を維持したまま対象を拡大するのではなく、既存の「結婚制度」とは異なる新しい法的枠組みを創設するものです。
フランスの PACS などがその代表です。
連帯市民協約
性別問わず2人の個人の間で安定した共同生活を営むために交わされる契約。18歳(成人)以上が条件。1999年11月15日施行。
当初は同性カップルを対象に作られた制度でしたが、2026年現在では約 95.7% と契約件数の大半を異性カップルが占めており、柔軟な関係性を好む層に広く支持されています。
日本の現状を鑑みたとき、伝統的な「婚姻の定義」を巡ってイデオロギー闘争を続けるよりも、こうした全く新しい契約形態を模索する方が社会的な合意形成が得やすいのではないでしょうか。
選択肢の一つとして議論すべきです。
家族の歴史的変遷と家制度の真実
田川
佐久間さんから「婚姻の定義」という言葉が出ましたが、そもそも結婚とは昔から男女一対のものだったのでしょうか。
歴史を紐解くと意外な事実が見えてきそうです。
佐久間さん、日本の「家制度」とその歴史について解説をお願いします。
佐久間
はい、かしこまりました。
ただ、田川さん、詳細な解説をすると、それだけで放送時間が無くなってしまいますので、かいつまんで説明させていただきます。
まずは人類史、そして文化人類学から考察すると「結婚は常に一人の男と一人の女」というのは歴史の一部だということです。
環境や経済状況に応じて一夫多妻、多夫一妻など結婚の形態は多様でした。
また、平安時代以降、男色文化が存在したのは歴史的事実です。
おとこいろぶんか
平安時代の宮廷や寺院の僧侶から始まり、戦国時代の武将、江戸時代の歌舞伎役者に至るまで、成人男性と若年男性の同性同士の身体的、精神的結合。
当時の男性同士の結びつきは、跡継ぎを残すのを目的とする異成婚と完全に両立していたのが特徴です。
結婚し跡継ぎを残すのが武士として当然の義務であり、それを果たしていれば若衆との恋愛をとがめられることは基本的にありませんでした。
そして、近代国家として歩み出した明治時代以降、政府は徴兵、徴税、そして社会福祉(扶養義務など)のインフラとして機能させるため、「家制度」と「戸籍」を整備しました。
明治政府は西洋の個人主義に対抗し天皇を中心とした国家を作るため、武士の慣習をベースにした「明治民法」を1898年に制定します。
それに伴い、家を存続させるための「出産と養育」に特化した男女の婚姻を標準として法的に固定化したのです。
これは国家の安定を保つために機能しましたが、同時にそこから外れる人々を制度的に不可視化する副作用を伴うものでもありました。
多喜川
ご指摘の「副作用」に苦しんでいる人たちこそが性的マイノリティです。
国家の繁栄のために効率的なシステムとして設計された「家制度」は、たしかに近代日本の発展に寄与しました。
しかし、「過去に適合したから現代でも正しい」と考えるのは「自然主義的誤謬」です。
※ 自然主義的誤謬:客観的事実を主観的善悪にすり替えてしまう推論。「家制度は日本の近代化に貢献した。だから現代にもこの制度を採用すべきだ」という推論は誤りとする考え方
かつての「家制度」が女性の権利を制限し性的マイノリティを抑圧してきた歴史的事実に、私たちは真正面から向き合う必要があります。
現代は個人の尊厳が憲法で最高価値として保障される時代です。
国家の効率性や過去の成果を持ち出し、現在生きている個人の基本的人権を侵害し続けるのは、法学的な見地からも正当化できるものではありません。
田川
近代の「家制度」が国家システムとしての効率化の上で作られたものだという指摘は興味深い。
しかし、現代の日本人はそこまで「家制度」を意識して結婚しているのでしょうか。
佐久間
おっしゃる通り、戦後の民法改正 により法的な「家制度」は解体されました。
みんぽうかいせい
1947年(昭和22年)、 日本国憲法の理念(個人の尊重と男女平等)に基づき「家制度」と「家督相続」が廃止され、現在の基礎となる夫婦同姓や法定相続制度が確立される。
しかし、人々の意識や慣習、さらには冠婚葬祭の作法の中に「家と家との結びつき」の感覚は色濃く残っています。
また、現在の戸籍法 が「夫婦と未婚の子の家族構成」を前提としており、実質的に「家制度」の概念を引き継いだ構造になっています。
私たちの戸惑いの原因は憲法では「個人の自由」を謳いながら、社会の実態やインフラの根底には依然として「家制度」の論理が機能しているねじれ現象にあります。
良くも悪くも「家制度」は私たちの心の底流に流れている。
この「家制度」の歴史的連続性を無視し法律の条文を書き換えようとすれば、必ず社会や国民にハレーション、すなわち、歪みや軋轢が生じるでしょう。
多喜川
私はそうは思いません。
逆にそのハレーションを起こさないためにも、法制度のアップデートが必要なのです。
LGBTQ+ の多様な生き方をインクルージョンしつつある国民に、法制度が追いついていない現状を放置する方が、前半に議論しましたが、国際社会的にも経済的にも、そして、人権保障の観点からも大きな障害でしょう。
かつては家長が決めた人間と結婚するのが当たり前でしたが、今では大概の人が自分の意思で結婚相手を選べます。
この「個人の尊重」という近代的な価値観を徹底するのであれば、パートナーの性別が同性であろうと異性であろうと、法的に平等な保護を与えるのが近代国家の論理的帰結です。
歴史に学ぶのは大切ですが、すべてが現代社会に適合するとは限らない。
時代に合わせ有益なものを吟味、取捨選択するのが正しい行為です。
伝統を言い訳にして未来への歩みを止めるべきではありません。
スタジオゲストへ田川が迫る! 多様な視点からの提言

田川
ここからは、視点をさらに広げたい。
本日のテーマに対し、独自の思想をお持ちのスタジオゲストにご意見を伺っていきましょう。
まずは、若者文化とファッションに精通する人気ユーチューバーのカズトさん。

カズト
ぶっちゃけ、僕ら若い世代からすると、「なぜ同性婚ダメなの?」って純粋に謎なんですよ。僕のチャンネル登録者の中にも当事者の人たちがたくさんいますが、普通に恋愛して真剣に将来を考えています。
法制化されていないので同性パートナーシップ宣誓制度を活用している人も少なくないです。地方自治体レベルでは当たり前なのに、それを「あなたたちは家族じゃないです」って国が弾くのはただのイジメですね。
伝統とか歴史にこだわり過ぎて、苦しんだり悲しんでる人を見捨てるのは本末転倒です。時代に合わせてルールを変えるのが近代国家のフェアな姿だと思います。
自治体が独自に同性カップルを「結婚に相当する関係」として公的に証明、宣誓受領証を交付する制度。
田川
カズトさんの優しさがとても伝わる意見だ。
次は国際弁護士のリサさん、お願いします。

リサ
私は仕事柄、多くの多国籍企業の人事部の方と関わりますが、先ほどのお話にもあった通り、日本の現状はビジネスの大きな障壁になっています。
海外から優秀なエグゼクティブを招聘しようとしても、「パートナーへの配偶者ビザが下りない国には行けない」と断られるケースが少なくありません。
日本が「人権後進国」というレッテルを貼られ、グローバルな人材獲得競争から脱落しつつある現実を国はもっと深刻に受け止めるべきです。
田川
なるほど、経済と国際競争力の観点からの厳しいご指摘です。
続いて、元最高裁判事の重松さん。
法曹界の重鎮としてはいかがでしょうか。

重松
私は長年、法の番人として国家の秩序と向き合ってきました。多喜川先生の人権を重んじるお立場は理解できますが、憲法24条が「両性の合意」と明記している以上、法解釈だけで同性婚を認めるには無理があります。司法が積極介入して違憲判決を乱発する現状は三権分立の観点からも危うい。
法律は社会規範の根幹を支える柱です。一部の当事者のためとはいえその柱を安易に動かせば家屋全体、すなわち、国家システム全体が倒壊する恐れがある。立法府である国会で議論を尽くすのが道理だと考えます。
田川
司法の限界と立法府の責任についての重い言葉です。
最後に外国人代表として、アジアの情勢を長く取材されてきたジャーナリストのアンジェリーナ・ゴソウさん。
これまでの議論を聞いて海外の事例と比べて日本の現状はいかがですか。

ゴソウ
私は台湾の同性婚法制化の際に関係者へ取材しましたが、アジアにおいて「家族の絆」や「親孝行」という価値観は非常に強固です。同性婚を急激に推進した結果、親世代と子世代の間で深刻な分断が起きたケースも見てきました。
欧米的な「個人の権利」を絶対視するアプローチだけではなく、アジア独自の「家族との調和」をどう図るか。日本の皆さんは、伝統と人権のバランスを保つ、独自のモデルを構築できると期待して見ています。
田川
皆様、多様で貴重なご意見ありがとうございました。
多喜川さん、4名の意見を聞きましたが、どんな感想をお持ちになりましたか。
多喜川
カズトさんとリサさんのご意見は、まさに現場のリアルな悲鳴と経済界の危機感を代弁しています。
一方、重松元判事の「司法の介入への懸念」は法学的に重要な視点です。
ただし、人権問題を改善せず不作為を続けている国会(立法府)に対し、訴訟という手段に頼らざるを得ないマイノリティの方たちの現実を理解する必要があります。
ゴソウさんの「アジア独自のモデル」という視点は非常に示唆に富んでおり、権利の主張だけでなく、周囲との調和を重んじるアプローチは日本の制度設計の鍵になるかもしれません。
佐久間
私もゴソウさんの意見に強く共感します。
伝統と人権に寄り添う合意形成が日本なら構築できるとのゴソウさんの期待に、日本人として応えたいと思いました。
また、重松氏が指摘された「国家システム全体への影響」は、まさに私が懸念している点です。
カズトさんのような若い世代の「苦しんでいる人がいるなら変えるべき」という純粋な思いは尊いですが、社会制度はジェンガのようなもの。
一本のピースを抜いたり差し替えたりするだけで、全体のバランスが崩れる可能性がある。
そのリスクをどうコントロールするか、それが冷静な議論として求められているのです。
結婚は契約なのか! 愛という名の情念とのジレンマ
田川
カズトさんの「愛し合っているのになぜ結婚できないのか」という疑問は、現代の私たちの感覚からすれば最も自然なものに思えます。
そもそも「愛」と「結婚」が結びついたのは、歴史的に見れば最近のことだそうですね。
佐久間
その通りです。
現代では「愛し合っているから結婚する」という価値観、いわゆるロマンチック・ラブ・イデオロギーを私たちは前提にしています。
Romantic Love Ideology
「恋愛で結ばれた男女が結婚し、家庭を築くことこそが最も自然で素晴らしい」とする価値観。18〜19世紀のヨーロッパで生まれ、日本では高度経済成長期に定着したとされる、現代の結婚観の根底にある思想。
- 恋愛と結婚の不可分性
恋愛感情の延長線上に結婚があり、結婚は恋愛によってのみ正当化されるという考え。 - 運命の存在
多くの人の中から「たった一人の運命の人」を見つけ出すことが理想とされる。 - 標準的なライフコース
「恋愛、結婚、出産」がセットでありこれが人生のスタンダードという社会的規範。
家族社会学において、このロマンチック・ラブ・イデオロギーが近代社会の形成とともにいかに定着し、結婚の前提を塗り替えてきたかが詳細に論じられています。
しかし、歴史学や社会学の観点から見ると、これは近代以降に形成された新しい概念です。
かつての結婚は家同士の政治的、経済的な結びつきを目的とした「契約」でした。
そこに当人同士の「愛」が存在するかどうかは考慮されません。
近代になって個人の自由が尊重されるようになり、結婚の動機が「家」から「個人の愛情」へと劇的にシフトしたのです。
同性婚を求める声の根底には、まさにこの「愛し合う個人同士の自由な結びつきを国は認めるべきだ」という、現代的なロマンチック・ラブの理念があります。
多喜川
佐久間さんの歴史的分析に異論はありません。
結婚の意義が「家同士の契約」から「個人の愛情に基づく結合」へと変化したことは、人類の精神的な進歩と言えるでしょう。
現在生じているジレンマは、社会の価値観が「人権の尊重」へと完全に移行している現代において、依然として婚姻の制度と法律が「家の存続や出産と養育を前提」にしているために生じています。
当事者たちが自治体のパートナーシップ宣誓制度 や民間の契約ではなく、国が認める「結婚の名称と制度」にこだわるのは、それが現代社会において「二人の愛情と絆が公的に承認されたことの証明」として機能しているからです。
したがって、代替手段では彼らの尊厳を完全には満たせません。
田川
しかし、結婚を「二人の愛情の証明」とだけ捉えると、国がそれを制度として保障する理由が弱くなるような気がしますが……いかがですか。
佐久間
まさにそこが最大の矛盾なのです。
もし結婚が純粋に「二人の愛の証明」であるならば、なぜそこに国家が介入し税制優遇や法的保護というコストを割く必要があるのか。
国家が結婚を優遇してきた最大の理由はそれが次世代の子供を産み育て、社会の存続を担保する再生産機能を持っているからです。
ロマンチック・ラブの観点だけで同性婚を正当化しようとすると、「友愛の情で結ばれた複数人の共同生活も結婚として認めるべき」という、制度の境界線を巡る際限のない議論に突入してしまいます。
愛という現代の価値観で過去の制度を裁く功罪を、私たちは冷静に見極めなければなりません。
多喜川
佐久間さんの懸念は極端な一般化が含まれています。
現代の法律では異性愛カップルにおいて、「生殖能力」や「子供を出産し養育する意思」は結婚の要件にされていません。
国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」 をみると、晩婚化など様々な理由で子供を持たない(持てない)夫婦の割合は年々増加しており、結婚と出産育児は必ずしもセットではない。
高齢で結婚する方、様々な理由で子供を持たない夫婦も等しく法的な保護を享受しています。
すなわち、国家はすでに「出産と養育」の目的から離れて、個人の安定した関係性そのものを保護する方向に舵を切っているのです。
同性カップルの法的保護の拡大は制度の境界線を崩壊させるものではなく、むしろ制度の理念を一貫させるために必要なプロセスだと私は確信しています。
現行の法制度は限界なのか! 憲法解釈と改変コスト
田川
議論はいよいよ核心に入ってきました。
現行制度の限界とそれを改変する際の具体的コストについて論を進めたい。
まずは憲法の問題。
憲法24条の解釈を巡って、司法の場ではどのような議論が交わされているのでしょうか。
多喜川
憲法24条1項は「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し…」と定めています。
第二十四条
婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
慎重派は「両性」という言葉を根拠に、異性間婚姻しか想定していないと主張します。
しかし、多くの憲法学者や最近の違憲判決を下した裁判所は、異なる解釈を提示しています。
この条文の背景にはかつての家長の同意が必要だった「家制度」を否定し、「当事者個人の自由な合意だけで結婚できる」という基本的人権の保障を宣言する強い目的がありました。
つまり「両性」という言葉は、当時の一般的な婚姻の形を表現したに過ぎず、同性婚を「禁止」する趣旨ではないという解釈です。
「両性」の文言を性別を問わない「両当事者」と置き換えるとわかりやすい。
「婚姻は、両当事者の合意のみに基いて成立し…」
この点について日本弁護士連合会は「同性の当事者による婚姻に関する意見書」 を提出しており、憲法24条は同性婚を禁止するものではなく、速やかな法制化が必要であるという明確な法的見解を示しています。
我が国においては法制上、同性間の婚姻(同性婚)が認められていない。そのため、性的指向が同性に向く人々は、互いに配偶者と認められないことによる各種の不利益を被っている。
これは、性的指向が同性に向く人々の婚姻の自由を侵害し、法の下の平等に違反するものであり、憲法13条、14条 に照らし重大な人権侵害と言うべきである。
したがって、国は、同性婚を認め、これに関連する法令の改正を速やかに行うべきである。
※ 「本意見書の趣旨」から引用
第十三条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第十四条
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
性的指向という自ら選んだものではない属性によって法的な保護を一切受けられない現状は、合理的根拠を欠く不当な差別に当たると言わざるを得ません。
佐久間
多喜川さんの憲法解釈は、現代的な人権感覚に適合させるための「目的論的解釈」としては理解できます。
しかし、法治国家である以上、文言の拡大解釈には限界があります。
もし時代に合わせて制度を変えるのであれば重松元判事が指摘されたように、解釈の変更ではなく国会による正式な憲法改正や法整備の手続きを踏むべきです。
そして何より、同性婚を法制化した場合の「社会的、実務的コスト」の議論が決定的に不足している。
推進派の「誰にも迷惑をかけない」という主張は、法務や行政の現場の複雑さを理解していません。
田川
佐久間さん、その「社会的、実務的コスト」について、具体的にどのような問題が生じるのか続けて下さい。
佐久間
影響は多岐にわたります。
最も深刻なのは「家族法」の再構築です。
かぞくほう
第725条から第881条までの条文で構成される民法の第4編「親族」、第882条から第1050条までの条文で構成される第5編「相続」の総称。
民法は母から生まれた子を嫡出子とするなど、男女の婚姻を前提に親族関係や親権が精緻に規定されています。
同性カップルが養子縁組や生殖補助医療で子供をもうけた場合、親権(共同親権)の帰属や子供の「出自を知る権利」をどう法的に整備するのか。
また、所得税の配偶者控除や社会保険の被扶養者の定義など、国家の財源に直結する社会インフラの書き換えも必要です。
さらに、戸籍システムそのものの仕様変更など数千億円規模の直接的、間接的なコストが発生するとも試算されています。
これらの技術的なハードルをどうクリアするのか、財源はどうするのかというロードマップなしに理念だけで突き進むのは危険、且つとても無責任な行為です。
多喜川
佐久間さんのご指摘は実務面において非常に重要です。
現行システムは異性間婚姻を前提に最適化されており、その改変には時間とコストがかかります。
しかし、地方自治体が導入しているパートナーシップ宣誓制度や民間の公正証書などでは、相続権の発生や税制優遇、共同親権の取得などの根本的な法的保護を得ることはできません。
当事者たちは現にパートナーの緊急手術に同意できない、亡くなった後の財産を相続できないなど、命や生活に関わる深刻な不利益を被っています。
システム改修のコストは国民の命と尊厳を守るために必要な、「投資すべき経費」と捉えるべきです。
諸外国が乗り越えられた法的、技術的ハードルを日本が乗り越えられないはずがありません。
多様性と社会の恒常性から読み解く未来への最適解
田川
番組は終盤に差しかかっています。
これまでの議論を踏まえ、「多様性の受容」と「社会的ホメオスタシスの維持」という、一見相反する二つの要素をどう両立させていくのか。
未来へ向けたお二人の提言をお聞きしたい。
佐久間さん、このゼロサムゲームから脱却する道はあるのでしょうか。
佐久間
「同性婚を認めれば伝統が破壊される」
「認めなければ人権後進国だ」
この二項対立に陥っている現状を変える必要があります。
私が提案したいのは日本独自の文化や歴史を踏まえた「第三の道」です。
例えば、先ほど触れたフランスのPACSのように、伝統的な「婚姻」とは異なる、しかし同等の法的権利と義務を有する新しいパートナーシップ契約の法的枠組みを国レベルで創設する。
あるいは、日本の伝統的な「家」や「縁組」の概念を拡張し、養子縁組制度をより柔軟に活用できるような法改正を行うことも考えられます。
現在、法務省の法制審議会、家族法制部会 においても、家族法の見直しや多様な家族形態への法的な対応が継続的に議論されています。
保守層の「伝統的結婚観を守りたい」という感情の部分を丁寧にケアしながら、「制度改変の手間とコスト」という実務の部分に公的資金を投入する。
これにより、当事者の法的保護という実利を確実に担保する。
これこそが、社会の分断を最小限に抑える現実的なグランドデザインではないでしょうか。
多喜川
慎重派の佐久間さんとしては同性婚肯定寄りの、かなり踏み込んだ内容ですね。
素直に敬意を表します。
提案された「第三の道」や社会的分断を避けるための配慮というアプローチは非常に理にかなっており、政治的な妥協点としては十分に機能する可能性があります。
しかし、人権の観点から言うと別の制度を設けることは、歴史的に見ても真の平等を達成し得なかったという事実があります。
「あなたたちは異性愛者とは違うから別の制度を利用してください」
このようなメッセージは、究極的には当事者の尊厳を傷つけるものです。
私が目指す最適解はやはり既存の「結婚」というインフラの制度を拡張すること。
ただし、佐久間さんが懸念される親権の問題や社会保障の改修については有識者会議を設け、時間をかけて精緻な制度設計を行う必要があります。
事実婚や同性パートナー間における医療同意や遺産相続、契約トラブルなど、現行制度の隙間で発生している実務的課題は山積しています。
多様な生き方を支える強靭なセーフティネットを構築し、結婚というインフラを次世代に向けてアップデートすることは社会全体の利益になるはずです。
田川
おふたりの議論を通じ結婚制度が単なる個人の愛情の問題ではなく、社会を形作る重要なインフラストラクチャーであることが明確になりましたね。
Infrastructure
社会生活や産業活動の基盤となる施設やシステム
- 交通
道路、鉄道、港湾、空港など - ライフライン
上下水道、電気、ガスなど - 通信
通信ネットワークなど - 環境
治水、ダム、ゴミ処理施設など
立場と解決方法は異なれど、日本社会のより良い未来を描こうとしている点では一致しています。
最後に本日のヒルガチの感想をいただいて番組を終わりたいと思います。
佐久間
多喜川先生との議論を通じ単に伝統を墨守するのではなく、当事者の痛みを取り除くための実務的アプローチを急がねばならないとの思いを強くしました。
伝統と文化の連続性を保ちながらいかに新しい血を社会に巡らせていくか。
今後もこの難題に共に取り組んでいきたいですね。
多喜川
こちらこそ、佐久間先生の社会学的な知見、実務的コストに対する冷徹な視点は、理念だけで走りがちな推進側にブレーキをかけてくれる、不可欠な重石であると痛感しました。
異なる視点から知恵を出し合い、誰もが生きやすい社会インフラをどう設計し直すか。
これは国民全員の「自分事」だと思います。
田川
お二人、本日も昼から生でガチバトルしていただきありがとうございました。
そしてお疲れ様でした。
特別コーナー ヒルガチ名誉顧問! 哲学者ソクラテスの私ならこうする

本コーナーは哲学的視点からテーマを思考することが目的です。オカルトや心霊現象の実在を主張するものではありません。また、否定するものでもありません。日本固有の民俗信仰であるイタコを通じ、哲学を身近に感じていただくための演出とご理解下さい。
田川
さて、ここからはヒルガチの癒やし、イタコの恐子さんの登場です。

イタコの恐子
御年87歳、イタコ歴70年、現役のイタコ。ゲンカイモンが1ヶ月かけて出演交渉、やっとの思いで口説き落とす。ずだ袋に忍ばせるおやつの南部せんべいを、いつもスタッフにおすそ分けしてくれる、愛と知性に溢れたヒルガチ自慢の看板娘。
田川
恐子さん、今日もよろしくお願いします。
南部せんべい美味しかった、ごちそうさま。
いつももらいっぱなしですいません。
早速、ソクラテスをお呼び下さい。
恐子
田川さん、今日もよろしぐな。
同性の人が結婚するって話だな。
わーが若い頃はそったらごど大っぴらに言う人はいながったが、今は時代が変わったんだべな。
愛し合う者同士が一緒にいがべって思うのは自然なごどだ。
んだらば、顧問ば呼んでみるすけ。(呪文を唱え、トランス状態に入る)
ソクラテス先生、おいでませ!
ソクラテス
田川よ、今日も広場で面白い議論をしておったな。

ソクラテス(紀元前469年生 – 紀元前399年没)
古代ギリシアの哲学者。西洋哲学の祖とされる人物。「無知の知」を自覚し、街頭での対話(問答法)を通じて人々に善や正義を問い続け、魂(プシュケー)の重要性を説く。著作は残さず、その思想は弟子のプラトンらが伝えた。若者を惑わせた等の罪に問われたが、「悪法もまた法なり」と死刑判決を受け入れ70歳でその生涯を閉じる。
田川
おー、ソクラテスよ、本日もありがとう。
現代の日本の「結婚」を巡る対立について、名誉顧問はどうアプローチされますか?
ソクラテス
うむ。
人々は「結婚とは何か」を知っているつもりで激しく争っているようだが、果たして彼らは本当に結婚の真の姿(イデア)を知っておるのか?
田川よ、汝に問おう。
国家が法をもって人々の結合を保護する最大の目的は「個人の欲求を満たすこと」か、それとも「善き市民を育み、国家という共同体をより善く保つこと」か、どちらだ?
田川
それは……近代の考え方では個人の幸福の追求ですが、顧問の哲学からすれば共同体をより善く保つため……でしょうか。
ソクラテス
うむ。
ならば、愛し合う同性の者たちが互いに誠実を誓い助け合い、他者を慈しむ生活を営むことは国家の秩序を乱す悪徳であろうか?
それとも、社会に安定と徳をもたらす善き行いであろうか?
田川
互いに助け合い、社会の一員として責任を果たすのであればそれは間違いなく善き行いであり、国家にとってもプラスになるはずです。
ソクラテス
うむ。
ならば解決策は明らかであろう。
名誉顧問、哲学者ソクラテスの私ならこうする!
「伝統的な名称」に囚われて本質を見失ってはならん。
重要なのは、彼らの魂の結びつきがもたらす「善き行い」を、国家が正当に評価し保護することだ。
制度の形や呼び名(法律の条文)は時代を生きる人間たちが、分断を避け最も調和をもたらす方法で知恵を絞って決めればよい。
真に探求すべきは言葉の定義ではなく、どうすればすべての市民の魂が善く生きられるかということなのだから。
田川
言葉ではなく魂を見極めよということか。
ソクラテスよ、今日も気付きをありがとう。
恐子
(我に返り)……ほえー、じいさん、今日も難しいごど言ってたな。
んだども、いがったいがった。
霧晴れて見えぬ道ここに現れん!
田川
恐子さん、本日も決めゼリフがビシッと決まりましたね。
どうもありがとう。
同性婚の法制化というテーマは、人権と伝統、経済と法制度が複雑に絡み合う難題です。
しかし、多喜川さん、佐久間さん、そしてソクラテスから学んだことは制度の形にこだわるあまり、目の前で生きる人々の「善き行い」や「愛」を否定してはならないということ。
同時に社会の土台を維持するための、実務的な知恵と配慮が不可欠であるということです。
私たちはこの議論を通じ、誰かを排除するのではなくすべての人が自分らしく、且つ安心して生きられる、未来のインフラを構築していくためのヒントが得られました。
あなたの脳内では第三の道が生まれましたか?
これからも対話を続けていきましょう。
また来週、この時間にお会いしましょう。
【参考サイト】
- 内閣府男女共同参画局
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/index.html - 日本経済団体連合会「ダイバーシティ&インクルージョン政策提言」
https://www.keidanren.or.jp/ - 日本学術会議法学委員会「婚姻の平等実現に向けた民法改正への提案 ―相次ぐ違憲判決をふまえて―」https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf2/kohyo-26-k260605.pdf
- 国立社会保障・人口問題研究所「家族と性と多様性に関する全国アンケート」
https://zenkoku-chosa.jp/pdf/2023NationalSOGISurveyReport_v2.1.pdf - 内閣府「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進」学術研究等
https://www8.cao.go.jp/rikaizoshin/research/index.html - 内閣府「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進」基本的な計画
https://www8.cao.go.jp/rikaizoshin/kihon/index.html - 日本弁護士連合会「同性の者も事実上婚姻関係と同様の事情にある者として法の平等な適用を受けるべきことに関する意見書」
https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/opinion/2021/210218_2.pdf
【ゲンカイモン総括】
本日のヒルガチ、あなたの「思考の筋肉」に心地よい疲労感が残ったでしょうか。
一つ、私自身が気づいたことがあります。
それは私たち国民が「婚姻制度を心の安寧の根拠にしている」という厳然たる事実。
それは、一種の依存症とも呼べるレベルです。
多くの人が結婚を「愛の証明」と信じて疑いません。
しかしそれでは、結婚をしない人たちの間には愛が存在しない逆説が成立することになる。
そんなことはありませんよね。
結婚しなくても幸せなパートナーシップを築いているカップルはたくさんいます。
本来、法律や制度は変化する社会の不都合を解決するためのツールです。
異性婚者の多くが、あるいは保守を自認する人たちが、たかがツールである制度を「家族の守り神」のように崇め、その観念が変わるのを恐れている。
そのため、目の前で苦しんでいる LGBTQ+ の人々の心の痛みを感じない「冷酷な伝統主義」に陥っていることに気付いていません。
一方、同性婚を推進する人たちもまた、「人権」という最強の武器を振りかざすことで、慎重派との対話の門戸を閉ざしていないでしょうか。
多様性の受容とは、互いの価値観を理解し受け入れ尊重することです。
それは同時に「あなたにとって心地よい環境が崩壊する可能性」をも受け入れる覚悟が時には求められます。
本日の議論の帰結として、私は一つの挑戦的な自論をあなたへ提示したい。
それは、「成熟した社会とは 『 結婚制度などなくてもよい 』と心の底から思えることである」という逆説です。
「私たち二人の愛を国家に承認してもらう必要などない」
婚姻制度の呪縛から解放され、胸を張ってこう言える社会は健全だと思います。
国の制度が個人の幸福の担保としてあまりに巨大化しすぎた結果、「結婚しない人生は未完成であり不幸である」という思い込みに、私たちは囚われ過ぎていないでしょうか。
改めて多様性の意味を考えると、その中には「結婚しない」という選択も含まれるはず。
そして、「結婚しない」選択をしたカップルを受け入れ尊重できる社会を醸成する。
多様な選択が可能な社会の実現。
そんな社会の実現のために必要な選択肢の一つ、それが同性婚の制度化なのです。
ゲンカイモンのこの自論に対し「 『 婚姻制度に縛られ過ぎている 』と言われているような気がするけれど、それでも私は同性婚の制度化は必要だと思う」と LGBTQ+ の人たちの反論の声が聞こえるのを想像します。
私は制度化に反対する立場にありません。
私が考える理想は同性婚が制度化されその上で、LGBTQ+ の方たちが「結婚しない」という選択もできることです。
それが私の自論、「成熟した社会とは『 結婚制度などなくてもよい 』と心の底から思えることである」の真の意味です。
多様な思考の一つとして参考にしていただければ幸いです。
今日のヒルガチがあなたのクリティカルな思考の醸成にわずかでも貢献できたなら、プロデューサーとしてこれ以上の喜びはありません。
また来週、この広場でお会いしましょう。
【予告】
来週は「死刑制度から占う日本の未来 ― 国家が合法的に命を奪うシステムは国民を守る正義なのか」 を放送予定、どうぞお楽しみに。
【より深くヒルガチを楽しむために】
初めて訪問された方は「ヒルガチの歩き方」 をご覧ください。
【クリティカルシンキングを理解する】
クリティカルシンキングについて「クリティカルシンキングを極める」 で解説しています。
【ゲンカイモン運営哲学】
なぜ、クリティカルシンキングスキルの鍛錬に討論が有効なのか?この答えは「ゲンカイモンの挑戦」 で詳述しています。
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