緊急放送!人の命と自然保護 マタギの知恵に学ぶクマとの共生

社会

昼から生でガチバトル(ヒルガチ)は実在しない架空の番組です。すべてゲンカイモンが創作したものであり、実在する人物、団体、書籍とは一切関係ありません。ただし、内容は参考文献に基づき正確性を期すよう、細心の注意をはらい制作しています。初めて訪問された方は「ヒルガチの歩き方」 をご覧ください。より深くヒルガチをお楽しみいただけます。

昼から生でガチバトルへようこそ、ゲンカイモン です。

物事を深く理解し、最適解を導き出すクリティカルシンキング

このスキルを習得するには、異なる視点を持つ者同士の討論に触れることが最も有効です。

昨今、連日のように報道されるサル、シカ、イノシシなどの野生動物との遭遇。

秋田県や北海道をはじめ、私たちの日常である市街地 (アーバン) にまで迫るクマの脅威。

「OSO18」のような怪物化した個体の出現、減りゆくハンター。

「殺すのはかわいそう」という声と「人命が第一」という国民同士の対立。

この分断された議論の先に見える未来はどんなものなのか。

そして、この野生の隣人たちと共生する道はあるのか?

今日は、雪深い秋田の山奥で命と向き合い続ける「山のプロフェッショナル」をお招きし、現代人が忘れかけている大切な視点を取り戻したいと思います。

さあ、思考の道場は用意されています。

田川さん、今日も元気よくいきましょう。

後はよろしく!


田川
ゲンカイモンさん、お任せください。

私から元気を取ったら何も残りません (笑)。

テレビの前のあなた、こんにちは。

田川福三郎です。

田川 福三郎 (たがわ ふくさぶろう)
ジャーナリスト歴60年。番組をまとめることが使命と信じる熱い男。事前にゲンカイモン、アシスタント大鷹、番組スタッフと入念に打ち合わせを行い、理論武装した上で番組へ臨んでいる。3人目のパネリストとして鋭く切り込む。


さぁー、今日も始まりました。

1週間で最も熱い金曜のお昼、ヒルガチのお時間です。

2回目の今日は喫緊の対策が望まれるあの問題がテーマ。


ジャーナリスト歴60年、数々の現場を見てきましたが、これほどまでに自然と人間の境界線が曖昧になり、衝突している時代は記憶にありません。

連日のようにニュースで報じられるクマによる被害。

これはもはや、たまたま起きた事故ではなく、日本の生態系と社会構造の変化が招いた必然かもしれません。

今日はこの難問に対し、最強の論客と現場を知り尽くしたプロをお招きし徹底討論してまいります。


テーマ発表とパネリスト紹介

田川
早速、本日のテーマを発表しましょう。

緊急討論! 人の命と自然保護 マタギの知恵に学ぶクマとの共生

2023年度、クマによる人身被害は219人、死亡6人と過去最悪を記録しました。

そして2025年度は10月時点で、すでに死亡者が13人と過去最多 ペースで推移しています。

北海道の「OSO18」の衝撃が記憶に新しい中、相次ぐ札幌市や秋田県の市街地での目撃情報。

もはや「里にいれば安全」という常識は崩れ去りました。

駆除か、共生か、それとも、第三の道があるのか。

それでは、本日のパネリストをご紹介しましょう。

駆除はやむなし、殺処分肯定派、クマとの共生は限りなく不可能とおっしゃる、危機管理が専門の豪田 健三郎さんです。

殺処分推進派:豪田 健三郎 (ごうだ けんざぶろう)
・元公安調査庁分析官
・危機管理コンサルタント
・リスクマネジメント、対テロ、対災害防衛のスペシャリスト
・著書『獣害列島、命を天秤にかける愚行』他

豪田
綺麗事は抜き、本音でぶつかります。

人の命に勝る動物愛護など存在しません。


田川
開始早々、厳しいですね。

続いて、現状を招いた原因は人間側にある、殺処分は根本的解決には至らないと主張する、環境社会学者の南 サトコさんです。

殺処分慎重派:南 サトコ (みなみ さとこ)
・環境社会学博士、埼葛大学教授
・野生動物保護管理学、環境倫理学の専門家
・著書『森の声を聞く、野生との共存』など


駆除ありきの議論に警鐘を鳴らしたいと思います。

彼らの住処を奪ったのは私たち人間なのですから。


田川
よろしくお願いします。

そして本日は、秋田県阿仁町から特別ゲストにお越しいただきました。

現役のマタギであり、山の厳しさと恵みを知り尽くしたプロ中のプロ、熊野 哲也さんです。

特別ゲスト:熊野 哲也 (くまの てつや)
・マタギ学校講師
・代々続くマタギの家系
・伝統狩猟と自然観察専門家
・現役の阿仁マタギ(シカリ:頭領)
・クマを「山からの授かりもの」として敬う

熊野
俺は学者先生みてえに難しいことはわからね。

ただ、山で見てきたこと、親父や爺様から教わったことを話すだけだ。

よろしぐ頼む。


田川
こちらこそよろしくお願いします。

このメンバーで、本日も徹底的に昼から生でガチバトルしていただきます。

大鷹さん、テーマの論点の紹介へとまいりましょう。


大鷹(アシスタント)
はい、田川さん。

大鷹 純 (おおたか じゅん)
徹底的なファクトチェックとパネリストとの出演交渉に奔走する影の立役者。田川、ゲンカイモンとは制作会議で激論を交わし合う同志。常に冷静沈着な仕事ぶりだが、実は誰よりもヒルガチを愛する熱血漢。初回放送では感極まって号泣する純粋な一面を見せ、視聴者とスタッフの心を掴む。

本日のテーマの主な対立軸をフリップにまとめました。

駆除推進派 (殺処分積極的立場)
  • 人命第一であり市街地出没個体は即時駆除すべき
  • 人を恐れない新世代クマは学習させても山へ戻らない
  • 農作物被害や経済損失を防ぐための個体数調整(駆除) が必要
  • 高齢化するハンターの負担を減らすため公的組織(警察、自衛隊) の導入
駆除慎重派 (殺処分に慎重な立場)
  • 里山を再生し緩衝地帯を作る
  • 広葉樹を植林しドングリを育てる
  • 過剰な駆除は個体群の構造を破壊する
  • 誘引物(生ゴミ、放置果樹) 管理を徹底する
  • 物理的(電気柵など) にゾーニングを強化する
  • 絶滅させたら生態系の崩壊を招く(種子散布など)


以上、本日の論点です。


過去最悪の被害と指定管理鳥獣への転換

田川
大鷹さん、ご苦労さま。

まずは現状認識から始めたい。

環境省は今年度 (2025年) 上半期 (4~9月) の全国のクマの出没件数は2万792件と発表、過去最悪だった2023年度を上回ります。

そして、遡ること2024年4月、ニホンジカとイノシシに加えクマを「指定管理鳥獣」 に指定しました。

これは何を意味するのか。

豪田さん、解説願います。


豪田
はい。

これは「鳥獣保護管理法」 に基づき、国 (農林水産省管轄) からお金が出るということです。

全国的に報奨金の底上げが可能になり、ハンターの負担軽減に繋がります。

北海道池田町8.13万円を筆頭に、各自治体により1頭1万円から6万円ほど報奨金 が支払われています。

私に言わせれば指定するのが遅すぎたくらいです。

クマ被害は災害に等しい。

これまでは自治体任せで予算もハンターも不足していました。

国が「指定管理鳥獣」に指定したことで、ようやく交付金が自治体に出るようになり、前記のような報奨金が払えるようになったのです。

市街地にクマが出る異常事態に対し、害獣として徹底的に管理し駆除するのは国の務めです。



ちょっと待ってください。

被害が増えているのは事実ですが、「害獣だから殺せばいい」では根本的解決には至りません。

そもそも、クマが里に下りてくる原因を作ったのは我々人間です。

耕作放棄地が増加し里山が藪化 (やぶか) 、クマにとっての隠れ家が住宅地の近くまで繋がってしまった。

そして、度々話題に上がるドングリの不作。

単年度の不作の原因は気候変動 (春先の遅霜、開花期の長雨、夏の猛暑など) ナラ枯れ ですが……。

しかし、その影響を致命的にする土台を作ったのが戦後の拡大造林 (針葉樹への植え替え) です。

ドングリなどの堅果類はもともと豊作と不作を繰り返す性質があります。

ミズナラやコナラ、ブナなどの広葉樹木の絶対数を減らしたのですから、不作の年に全体のドングリの量が減少するのは必然です。

つまり、山全体の食料供給能力を下げたのは紛れもなく人間なんです。

そして、冒頭でゲンカイモンさんが触れたOSO18。

OSO18

オソじゅうはち2023年7月に駆除されるまで、標茶町と厚岸町で66頭の牛を襲ったヒグマのコードネーム

ハンターたちが狩猟後のエゾジカをその場で処理、持ち帰り切れない内臓や骨などをそのまま放置。

それが原因でヒグマが肉の味を覚え、牛などの家畜を襲うようになった。

これが「OSO18特別対策班」のリーダー、藤本 靖(ふじもとやすし) さんの見解です。

すべて、人間の都合でやってきたこと、起こしてきたことばかり。

このことをすっかり記憶の彼方へ葬り去り、里へ下りてきたから殺す……。

たとえ1頭目を駆除できても2頭目、3頭目、4頭目と、他のクマがやって来ます。

永遠に撃ち続けるのですか?

殺処分は根本的な解決になりません。


豪田
だからと指をくわえて黙認する理由にはならない。

子供たちは毎日、命の危険にさらされて通学しているのですよ。

南さん、事故があったらあなた、責任とれるんですか?

理想論で命は守れません。


熊野
豪田さんの言うことはわかるが、毎日山に入っていると、あくまで俺の感覚だが……少し違う気がするんだよ。

南さんが説明してくれたが、今年は特にブナの実やトチの実が不作だっだ。

森吉山 (もりよしざん:秋田県北秋田市に位置する標高1,454.2mの火山) のあたりも、アオモリトドマツやブナの林があるが、実がつかねえ年はクマも必死だ。

昔はマタギが山に入って人間の怖さを教えていたもんだが、今は山に入る人間の数が減った。

食い物がない上に人間がいない。

そりゃぁ、里へ里へと下りて来るのは必然だ。

何が言いてえかっていうと、クマにしてみれば人間との境界線がわからなくなってるんじゃねえかなあ。

俺らはブナの実を増やすことはできねぇが、境界線を教えることはできる。

たとえ食うものがなくても、超えちゃいけねえ一線を教えてやりゃあ、里に下りてこなくなる可能性があるということだ。

徹底駆除は物理的に無理がある。



熊野さんがおっしゃる通りです。

クマが悪いのではなく、人間側のライフスタイルが変わったことが主因です。

里山の藪払いをしなくなり、放置された柿の木や生ゴミが誘引物になっている。

それを棚に上げて「凶暴化したから殺せ」というのは知的な選択ではありません。

人間の目には凶暴に見えますが、生きていくために食べ物を探しているだけです。

それが野生というものでしょう。

生息域が拡大したのではなく、餌を求めて移動せざるを得ない状況に追い込まれている、この事実を理解しなければいけません。


田川
確かに、人間側の管理不足は否めません。

しかし、現実に市街地にクマが出没している映像を見ると、何か対策を打たなければいけないのは確かです。


駆除は正義か悪か? 人命と動物愛護の狭間で

豪田
南さんは殺処分を「知的ではない」と言いますが、襲われた被害者へ同じことが言えますか?

特にアーバンベアは1度人間の味 (生ゴミや農作物) を覚えると、山奥に放しても戻ってきます。

私は指定管理鳥獣として春グマ駆除も含めた、積極的な個体数管理を行うべきだと考えます。

「かわいそう」という感情論が対策を遅らせているんです。



感情論ではありません。

科学的なデータに基づいています。

無差別な「春グマ駆除」は子育て中の母グマまで殺すことになり、種の存続を脅かします。

学習能力が高い個体を殺せばかえって若い無知なクマが里へ流入し、被害が増えることが懸念されます。

やるべきは個体識別とモニタリングに基づいた科学的管理であり、全滅作戦ではありません。


熊野
まあー、お2人の言うことは極端だなあ。

俺たちマタギにとってクマは、「山の神からの授かりもの」だ。

憎んで殺すわけじゃねえ。

だけどな、春の猟はやるよ。

雪があるうちは足跡も追えるし、ショウブができる。

ショウブ

勝負:マタギと熊が対等な立場で行う真剣勝負、マタギ用語のひとつ

だが、子供のクマは見つけても逃す。

大人になってからショウブすればいい。

この「塩梅 (あんばい:物事のほどよい具合、加減)」が法律じゃあ難しい。

全部殺すか、全部守るか、0か100かじゃ、山は維持できねえ。


田川
「塩梅」……ですか。

マタギの文化には持続可能な利用の精神が根付いている。

現代社会が失ったバランス感覚かもしれません。


海外の事例から考察する、日本の地形的特殊性とゾーニング

田川
ここからは、海外の事例を見ていこうと思います。

南さん、日本と比較しながら、海外の具体的クマ対策を教えていただきたい。



はい、わかりました。

海外には学ぶべき先進的な事例がたくさんあります。

例えばカナダのウィスラーなどで導入されている、「※ベア・スマート・コミュニティ」 制度です。

ベア・スマート・コミュニティ

自治体などが中心となり人間の生活圏へのクマの誘引を防ぐ管理を徹底、共生を目指す取り組み

ここでは、誘引物となるゴミの管理が条例で厳格に定められています。

ゴミ箱にはクマが開けられない特殊なロック (ベア・プルーフ) が義務付けられ、違反者には高額な罰金が科されます。

また、アメリカのヨセミテ国立公園 では車内にキャンディの包み紙一つ残しただけでも罰金の対象になり、徹底的な食料管理でクマを人間の生活圏から遠ざけることに成功しています。

日本も精神論に頼るのではなく、こうした仕組みと罰則をセットで導入すべきです。


豪田
南さんは成功例ばかり挙げますが、失敗や混乱の事例も出さなければ視聴者に誤解を与えます。

例えばルーマニア

EUの指令でヒグマを厳重に保護した結果、個体数が激増しヨーロッパ最多のクマ大国となりました。

それに比例して人身被害や家畜被害が頻発している。

スロバキア でも最近、市街地でクマが暴れ回り、非常事態宣言が出される騒ぎがありました。

さらに、北米と日本じゃ地形的条件が違いすぎます。

アメリカには人間が一人もいないワイルダーネス (Wilderness:荒野、手つかずの自然) があるけれど、日本は山頂付近まで登山道があり山裾にすぐ集落がある。

国土が狭い日本ではほとんど参考にならない。

行き場がないクマと人間が鉢合わせするだけです。


熊野
ふむ、海外の話は面白いもんだな。

罰金で縛るってのは、いかにもあちらの国らしい。

日本には昔、人間とクマとの間に 里山という緩衝地帯 (大国に挟まれた国や地域) があった。

里山

人々の暮らしのすぐ近くに広がる山や森、雑木林、田畑、ため池などの自然環境

そこではマタギが炭を焼き、薪をとり、人間の気配を感じさせることで、「ここから先は人間の陣地だぞ」と音や匂いでクマに教えていた。

それが一番の棲み分けだったんだがな……。

工作放棄地が増えるが、草刈りができる若いもんがいねえ。

だから今では自宅の裏が藪になっちまって、クマとの境界線がなくなっちまった。

雪の上を歩けばわかるが、クマは尾根伝い、藪伝いに来る。

隠れる場所がありゃあどこまでも来る。

頑丈なゴミ箱を置くのもいいが、まずは家の裏の草刈りをして、失われた境界線を自分たちの手で引き直すことが正しい順序だな。


田川
なるほど。

足元の現実を見ろ、ということですね。

確かに制度論ばかり先行し、草刈りができていない地域が多いのが現状です。


効果的なクマ対策を考える

田川
豪田さん、草刈り、藪払いが大事なのはわかりました。

では山の中、市街地でバッタリ遭遇したらどうすればいい。

本当にクマ鈴やラジオに効果はあるのか?


豪田
視聴者のみなさんが知りたいのはそこだと思います。

今、田川さんが挙げた他にも、ホームセンターには爆竹、電子ホイッスルなどの対策グッズが色々売られています。

果たして、これらがクマよけに効果があるのか?

専門家や登山愛好家の間でも意見が分かれています。

Web上では異なる意見に対し、誹謗中傷する投稿者が散見されるほど、賛否の声が飛びかっている。

意見が割れる理由は簡単。

自分の体験でしか語っていないからです。

それぞれの人が遭遇するクマは当然みな異なる。

「クマ鈴には効果がある」という人は、遭遇したクマがたまたま人馴れしていない、警戒心が強いクマだった。

「クマ鈴には効果がない」という人は、遭遇したクマがたまたま人馴れした、警戒心が弱いクマだった。

効果がある、効果がない、どちらも事実であり、個体差によって違うだけのこと。

クマは極めて賢い。

ラジオの音や爆竹の音がしても、「何も悪いことは起きない」と学習したクマにクマ鈴は効きません。

すなわち、人に対する警戒心が強いクマにはクマ鈴の効果が期待できる。

しかし、学習し人馴れしたクマにはその効果は期待できない。

これが田川さんの質問に対する答えです。

あなたの経験と異なる意見に対する誹謗中傷は、今すぐやめましょう。

個体差が原因なので、異なる意見があるのは当前なのです。

一方、果物、野菜、穀物などの栽培に従事する人たちにとって、電気柵が有効な手段ですが設置して終わりではありません。

下草が伸びて電線に触れれば漏電し電圧が下がるので、ただの番線になってしまいます。

したがって、必ず草刈りをしなければならない。

それができないなら設置しない方が賢明です。

コストをかけた分、損失になるだけですので。



豪田さんのご指摘はもっともですが、個人の対策がすべて無意味なわけではありません。

特に「クマ撃退スプレー」は高い効果が期待できます。

唐辛子成分 (カプサイシン) を含んだ強力なスプレーを確実に鼻先へ散布できれば、90%以上の確率でクマが逃げて行くとデータに出ています。

ただし、スプレーの射程距離は5メートル前後、至近距離で噴射し命中させる技術が必要なので、必ず事前に練習することをお勧めします。

また、軽井沢などで成果を上げている「ベアドッグ (クマ対策犬) による追い払いなど、熊野さんが言うところの「境界線」を教える非致死的手段をもっと普及させるべきです。


熊野
スプレーか……便利ではある。

だが、クマが風上から来たらどうする?

自分にかかるリスクがあるぞ。

俺たちマタギも鈴はつける。

「人間様が通るぞ」という山への挨拶みたいなもんだ。

昔のクマはそれで避けてくれたが、豪田さんが説明した通り、今のクマは挨拶を無視して寄ってくるやつがいる。

だから俺たちは「フクロナガサ」という山刀を腰に差す。

鉄砲が不発だった時、最後はこのフクロナガサ一本でクマと刺し違える覚悟を持つんだ。

山刀を持つことが大事なんじゃねえ。

覚悟があるかどうかなんだよ。


豪田
山刀で刺し違える覚悟など一般市民に求められません。

現実的ではない。

やはりテクノロジーで解決すべきです。

最近はAIを搭載したカメラでクマを自動検知しドローンで追跡、威嚇するシステムが開発されています。

また、クマが嫌がる周波数の音が発生する発音器 の研究が進んでいる。

これからの時代、できるだけ機械を有効活用し、リスクを低減することが大事になってきます。

練習も覚悟も不要なシステムこそが現実的な対策です。


熊野
俺は山に入るとき、モロビ (アオモリトドマツ) を燻 (いぶ) して体を清める。

これは匂い消しもあるが、気合を入れる儀式でもある。

クマと対峙するとき一番大事なのは、道具じゃなく気迫だ。

豪田さんが言うテクノロジーとやらは合理的だが、それが人間の五感と気迫を衰えさせなきゃいいんだがな……それが心配だ。


田川
テクノロジーに頼り切った現代人には耳が痛い話だ。

機械は停電、電池切れのリスクがある。

しかし、実際に一般市民がクマに遭遇した際のパニックは計り知れない。

最新のハイテク技術と基本的な対策グッズ。

この両方を理解していなければ、自分の身が守れない時代に突入しているのかもしれません。


スタジオゲストへの直撃インタビュー!

田川
ここで、スタジオにお越しの個性豊かな一般ゲストの方々にもご意見を伺ってみましょう。

今日は様々なバックグラウンドを持つ方々が集まってくれています。

まずは若い方に聞きたいな。

歌舞伎町でホストクラブを経営されてるヒカルさん、これまでの議論を聞いてどうですか?

ヒカル

正直、クマも客と一緒で、ルール守れない奴は出禁 (デキン:出入り禁止) にするしかありません。
自分の店でも、暴れる客にはセキュリティ入れます。
アーバンベアとか言ってますけど、人間のテリトリーっていう店に入ってきた時点でもう客じゃないですよね。
かわいそうとか言ってる姫 (女性) たちもいるけど、実際に彼女らの推し (担当) が襲われたら、絶対「許さない」ってなりますよ。
しっかり線引きしないと、店 (街) が回らなくなります。


田川
なるほど、うまいこと店に例えたね。

次にフランスからお越しのマリアさん。

フランスと比べて日本の現状はどう感じますか?

マリア

フランスやアメリカには、パークレンジャーという誇り高い職業があります。
彼らは警察権を持ち、動物学の博士号を持っていることも珍しくありません。
日本もハンターは趣味の延長という意識を変え、尊敬される職業に飛躍させるよい機会です。
ピンチの中にこそチャンスが眠っているのです。

パークレンジャー

国立公園や州立公園で働いている職員、公園内の自然を保護するために多様な業務を行う


田川
ありがとうございます。

では次に、元暴力団組長、現在は更生施設の所長をされている龍三さん、いかがですか?

龍三

わしは長いこと裏社会におったが、今は更生施設をやらせてもらっている。
1度、道を踏み外した人間でも、チャンスと環境を整えてやればやり直せると信じているからな。
人を襲った「人食い」は処分するしかないが、まだ悪さをしとらん子グマなら、山奥へ放免してやる度量も必要かもしれん。
種の保存という意味でもな。
大人になった子グマは、熊野さんとショウブしてもらったらいいだろう (笑)
問題は罠にかかった若いクマを、山奥へ戻す仕事を誰が請け負うかだ。こいつは労力はもちろん、常に命を失う危険と隣り合わせだ。
殺処分の方が楽なのは素人でもわかる。
山へ戻す作業を高齢化が進んだ猟友会に担わせるのは酷な話だろう。
現実的じゃねぇわなぁ。


田川
ありがとうございます

マリアさんの「尊敬される職業に飛躍させる」、この発想は日本人はなかなか思いつかない。

あとは龍三さんの、「若いクマを山へ戻す作業を誰が請け負うのか」という問題。

これは、担い手である「ハンター数の減少と高齢化」に直結する問題ですが、猟友会につい先日まで所属していた清志さんという方をお呼びしています。

清志さん、元会員として言いたいことおっしゃって下さい。

清志

田川さん、あんがとよ。
まぁー、とにかく年には勝てねえ。
わしはもう75だ。
年々、目が悪くなる。
鉄砲持つ手も震える。
若いのが入ってこない中、毎日のように駆除要請が来る。
報酬も弾代で消えちまう。
命かけて赤字でやってるのに、愛護団体から抗議電話が来るんだ。
やってられんよ。
国がよお、「なぜ駆除しなきゃいけねえか」っていうのをもっと世間に説明しろってんだよ。
困ってる住民からは駆除の要請が来る、一方で、南さんのような、いや、南さんが言ってることもわからなくはねえ。
俺だってクマが憎くて撃つわけじゃねえからな。
だが、困っている住民たちを無視するわけにはいかねえから、撃つときは撃つ。
何が言いてえかっていうとさ、住民と動物愛護の人間との板ばさみになってるってえーことだ。
それに耐えられず、今はマタギならぬカタギになったっちゅうーことだ (笑)
残念だが、鉄砲の免許は更新しねえ。


田川
あははは……、清志さん、うまい!

ハンターの高齢化は顕在化している問題ですが、世間との軋轢はまだ表だって報道されていない。

愛護団体へ取材に行かなきゃダメだ、なぁー、大鷹さん!

貴重な生の声、清志さんありがとうございました。


ハンター数減少と高齢化 一体誰が街を守るのか!

熊野
清志さんが言う通りだ。

俺ら阿仁マタギも、昔は40人いたが今は5人くらいだ。

猟友会もみんな年寄りだ。

山を歩ける体力がある若者がいねえ。

それに、昔みたいにクマの胆 (い:クマの胆嚢を乾燥させたもの、古くから生薬として珍重されてきた) が高く売れるわけでもねえし、これだけじや食っていけねぇからな。

マタギ勘定でみんなで肉をわける、あの喜びと連帯感も薄れてきちまった。

マタギ勘定

クマの肉や内臓は貢献度に関係なく猟に参加した仲間で公平にわけること


清志さんと熊野さんの気持、よくわかります。

ボランティアのハンターに頼る今のシステム、とっくに限界を超えているんです。

ハンターが減少している現実 がある以上、広葉樹を植える、作物や食べ物を外には置かない、藪刈りを行う。

時間と労力はかかりますが、これらの作業を地道に実行していくしかありません。

遠回りに見えますが、これが共生 (根本的解決) への1番の近道です。


豪田
何を悠長な!

今、目の前にある危機には自衛隊や警察の介入を含めた、法的措置の緩和しか選択肢はありません。

植林してからドングリの実がなるまで何年かかると思っているんだ!


熊野
まあー、豪田さん、聞いてくれ。

田中や山本みてえな、よそから来てマタギになりたいっていう若者がいるにはいる。

あっ、田中と山本ってぇーのは、知り合いの若いマタギだ。

俺にマタギの何たるかを習いてえーってよ、最近隣町から来たんだ。

嬉しいねえー。

そういう若いもんにマタギの技術や精神を伝えていくのも、一つの道かもしれねえな。

山の神様との付き合い方も含めてな。

そうすりゃ、鉄砲撃ちが少しは増える。


激突! 人命の重さと現実の厳しさ

田川
マタギが増えれば警察、自衛隊の導入は必要ないというご意見ですね。

これは豪田さん、納得できないでしょう。


豪田
熊野さんの、美しいマタギの精神の継承は、これからも是非とも続けていただきたい。

ただし、すぐそこにある危機の対応には即効性が求められる。

マタギを1人育てるのに何年かかるのでしょうか?

これから学校へ行こうとする子供の命を守るには間に合いません。

そのために私は警察、自衛隊の導入を推奨しているのです。

そっちもそうだ!

「共生」なんて言葉はな、被害者の傷口に塩をすり込むようなもんだろう!

冷静に考えてみろ、クマは猛獣なんだぞ。

隣同士で仲よく住むなんて不可能なんだよ!



何ですって!

あんたのように、野生動物を害獣としか見ないその傲慢さが自然破壊を招くんでしょう!

人間がどれだけの動物たちを絶滅に追いやってきたか、あんたは知らないの?

少しは歴史を勉強しなさいよ!

熊野さんの「授かる」という感覚が、あんたには欠落している!


豪田
なんだと!

現場を知りもしないで……。

同じセリフ、被害者に言ってみろ!


田川
はいわかった、二人ともそこまで。

「そっち」とか「あんた」呼ばわりはやめましょう。

建設的な議論をするために集まったんでしょう。

視聴者は罵り合いなど求めていません。


豪田
南さん、失礼しました。

熱くなり過ぎてしまいました。



私こそ、すいませんでした。

つい興奮して……、言い過ぎました。


熊野
まあー、山でもな、イライラしていると事故が起きる。

雪崩が起きるしクマにも気づけねえ。

豪田さんが言う「人命を守る」ことも、南さんの「共生」も、どっちも大事だ。

マタギだって、クマと対峙する時は命がけだ。

そして、仕留めた後はケボカイをして魂を山へ返す。

ケボカイ

クマを山神様からの授かり物とみなしその魂を山神様のもとへ帰す儀式、シカリ (頭領) が行う。山神様への感謝と授かったクマの供養、今後の豊猟を願う

「また肉と皮を授けてください」って祈るんだ。

クマに対する「畏れ」と山の神への「感謝」があれば、無駄な殺生はしないし必要な時は迷わず引き金が引ける。

今の日本に足りないのはこの「感謝の念」から来る、「塩梅」なんじゃあねえのかなあ。


田川
塩梅……先ほども出ましたが、ほどよいバランスと言えばいいのか?

山の神への感謝、クマへの感謝、「感謝の念」が失われると塩梅が崩れる。

マタギの世界、深すぎる。


視聴者からの提言、山のプロ育成プロジェクト

田川
番組は後半戦の終盤にさしかかっていますが、とても興味深いメールが届いているとスタッフから連絡がありました。

リアルタイムで反応が来る、生放送ならではです。

大鷹さん、紹介して下さい。


大鷹
はい、田川さん。

今日もたくさんのメールを頂戴しています。

本当にありがとうございます。

代表してお一人の方、長文ですがノーカットで読ませていただきます。

大阪在住の森のタヌキさんです。

森のタヌキ

森のタヌキと言います。先週の1回目の放送 、メッチャ面白かったです。本題です。豪田さんは「警察や自衛隊と連携するしか選択肢がない」と言われますが、警察官と自衛官は「山とクマの素人」ですよ! 何の訓練も受けていません。

あなたが指揮官の立場だったら、彼らに出動命令出せますか? この問題の解決方法は、山のエキスパートを育成するしかありません。警察官や自衛官に犠牲者が出てからでは遅いのです。

この育成機関には補助的に税金を投入します。理想は警察や自衛隊と同じ国家公務員化です。この育成機関では、動物学、気象学、植物学など、山に関わるすべての学問を学習してもらいます。

地元で林業に携わる人を講師として招いてもいいですね。もちろん、罠やライフルなどの銃器類の知識、市街地を想定した射撃など、様々な実戦的訓練が受けられます。

時間がかかると反論されるなら、警察官、自衛官からエリートを選抜、熊野さんのようなエキスパートが「山のしきたり」をみっちり叩き込んで、臨時の特別部隊を組織すればよいと思います。

マタギの技術継承、猟友会の高齢化問題、新たな雇用創出と一石三鳥です。夏場のきつい薮刈りも彼らに任せれば即解決です。


田川さん、以上です。


田川
大高さん、ご苦労様。

森のタヌキさん、ありがとうございます。

非常に具体的な提案です。

「素人を山に送るな」

「エリートを選んでマタギが鍛え上げろ」

豪田さん、痛いところを突かれた。

何と答えますか?


豪田
うぅーん、何とも耳が痛いご指摘ですが反論できません。

ぐうの音も出ない、脱帽です。

非常に論理的かつ具体的な提案に驚きました。

今の警察の訓練マニュアルにはおっしゃる通り、対クマ対処は想定されていません。

すなわち、装備もなければスキルもない。

確かに、通常の警察官をそのまま山に入らせるのは自殺行為です。

クマ出没の一報が入れば現場の指揮官は歯がゆい思いで、大切な部下に出動命令を出すことになる。

この「選抜エリート部隊」という発想は正直なかった。

一本、取られました。

レンジャー部隊や機動隊の中から身体能力の高い者を選ぶ。

もしくは志願者を募り、熊野さんのような「山の師匠」を招聘する。

これならゼロから育成するより遥かに早く、即戦力になるでしょう。

私も精鋭集団を組織するという構想はありましたが、まだぼんやりとした大雑把なものでした。

専門家としてお恥ずかしい限りです。



私も森のタヌキさんに大賛成です!

特に素晴らしいのは、「射撃」だけでなく「動物学、気象学、植物学」を学ぶところ。

単なる「駆除部隊」ではなく、生態系を理解した「レンジャー (環境保全官)」としての資質を求めています。

労力がかかる藪刈りも公務にすることで継続的に行われる。

地元のお年寄りの負担が軽減され、防災の観点からもとても効果的です。

これこそ、ジャパン・パークレンジャーの夜明けになるかもしれません。


熊野
わしを講師にするって?

ハハッ、責任重大だな。

まあでも、自衛隊の兄ちゃんたちなら体力はあるだろうし、根性もありそうだ。

ただな、「山のしきたり」ってえのは、教室で教科書読んで覚えるもんじゃねえぞ。

風の匂いで天気を読んだり、雪の崩れる音を聞き分けたり、クマの気配を肌で感じたり……。

山の中で命をかけて体に叩き込むもんだ。

本気で山と向き合う覚悟があるなら、わしが持っている技術、全部教えてもいい。

ひとつ肝心なことを言っておくが、鉄砲の撃ち方はもちろん大事だ。

撃たなきゃ、仕留められねぇからな。

だがな、もっと大事なのは「いつ撃たないか」の判断なんだよ。

それもひっくるめて教えてやりてえな。


田川
「いつ撃たないか」

素人にはわからない世界だ。

これを伝授する……これぞプロフェッショナルの神髄。

提案にある「公務員化」の出口戦略があれば、若い世代が安心してこの厳しい訓練に飛び込める。

クマの出没におびえる住民たちにはレンジャー部隊が常駐することで、いつでも駆けつけてくれる精神的な安心感が生まれる。

熊野さんたちマタギにとっても、伝統継承をしながら講師としての報酬が得られる。

まさに、絵に描いたような三方よしの構図だ。

さらに龍三さんの懸念点、「若いクマを山へ連れて行く仕事を誰が請け負うのか」、これも彼らが担ってくれる。

そして、マリアさんの「誇り高き職業へ飛躍するチャンス」というご指摘。

住民から感謝される「誇り高き職業」へと一挙に飛躍できる。

これは凄いことになった。

三方どころか五方も六方もよくなっちゃう。

すべてを実現する「ジャパン・パークレンジャー」創設を、今すぐ高市総理へ提言したいですね!


共生への道筋は見えたのか!

熊野
なんだかうまいこと話がまとまっちまったようだが、最後に言いてえこと言わしてもらうぞ。

俺はな、クマを捕るときは「ショウブ」だと思っている。

「ショウブ」ってえーのは、人間とクマ、対等の立場での命のやりとりだ。

クマに限った話じゃねえぞ。

豚肉だろうと牛肉だろうと、屠殺してくれる人がいるから手軽に手に入れられる。

普通の人はスーパーで肉を買う時、命のやりとりなんか見ちゃいねえから、命に対して何も実感が湧かねえ。

実感がないから、クマが出ればパニックになるし、殺せば「かわいそう」だと抗議の電話をかけてくる。

自分らが自然の一部だってことを忘れているんだよ。

自然の一部ってえーのはよ、他の生き物の命をいただかなきゃ、生きられねえってことだ。

クマとの共生っていうのは仲良く手を繋ぐことじゃねえ。

お互いに怖い存在だと認め合って、適切な距離を保つことだ。

相手の陣地をわきまえて侵入しない、そして、侵入させない。

そのためには、時には厳しく追い払うこと、山を整えることが必要だ。

それがクマに境界線を教えるということだ。

マタギはそうやって、何百年とこの阿仁の山で生きてきたんだよ。


豪田
対等な命のやり取り……ですか。

私もクマと同じ自然の一部……だと。

私は安全という名の下に、一方的に管理することに固執し過ぎていたのかもしれません。

視野が狭くなっていた。

適切な距離を保つための厳しさが、「殺処分だけ」でいいのか。

もう1度自分自身に問いかけ考えたいと思います。

本日はありがとうございました。



私は保護を優先するあまり、クマの恐怖に怯えながら暮らしている人たちの心に寄り添えていませんでした。

このことに、豪田さん、熊野さん、田川さん、3人との討論を通じて気付かされました。

殺処分反対と叫ぶのは簡単ですが、それだけではただの「うるさい観客」なのだと、身に沁みて感じています。

プレイヤーとしてグランドに立つには、「ジャパン・パークレンジャー」を提案された森のタヌキさんのように、私自身が殺処分に対する対案を持たなければいけませんね。

多くの気付きをいただきました。

今日の「ヒルガチ」に参加できたことに感謝いたします。

本当にありがとうございました。


田川
お2人の意見が熊野さんの知恵を通じて確実に歩み寄リました。

豪田さん、南さん、そして、熊野さん、昼から生でガチバトルしていただき誠にありがとうございました。

そして、お疲れ様でした。


名誉顧問の特別コーナー 哲学者ソクラテスの私ならこうする!

本コーナーは哲学的視点からテーマを思考することが目的です。オカルトや心霊現象の実在を主張するものではありません。また、否定するものでもありません。哲学をイタコという民俗信仰を通じ、身近に感じていただくための演出とご理解下さい。

田川
ここからは、1回目の放送でも大好評、あの特別コーナーに移りたいと思います。

現代の難問を古代の知恵で解き明かしてもらいましょう。

お呼びするのはヒルガチの看板娘、イタコの恐子さんです!


恐子
はいはい、どうもね。
(南部せんべいをかじりながら登場)

イタコの恐子
御年87歳、イタコ歴70年、現役のイタコ。ゲンカイモンが1ヶ月かけて出演交渉の末口説き落とす。普段の柔らかい南部弁と、憑依時の威厳ある口調との「ギャップ萌え」がたまらない。ずだ袋に忍ばせるおやつの南部せんべいをいつもスタッフにおすそ分けしてくれる、愛と知性に溢れたヒルガチ自慢の看板娘。


今日はまた、わざっと山深い話っこ、してるんでねぇの。

秋田のマタギ、いい面っこしてるじゃ。

雪の匂い、すっけなぁ。

あいよ、田川さん、せんべい。


田川
あはは……、ごちそうさま。

南部せんべい、美味いですよねえー、本番終わったらゆっくりいただきます。

恐子さん、いきましょうか!

それではお願いします。


恐子
んだば、今日もあの方を呼んでみるかね。

うぅーん……、はぁー……。
(首が垂れ恐子の表情が厳格になる)


ソクラテス
田川よ、今日も面白い議論をしておったな。

ソクラテス (紀元前469年頃 – 紀元前399年)
古代ギリシアの哲学者。西洋哲学の祖とされる人物。「無知の知」を自覚し、街頭での対話 (問答法) を通じて人々に善や正義を問い続け、魂 (プシュケー) の重要性を説く。著作は残さず、その思想は弟子のプラトンらが伝えた。若者を惑わせた等の罪に問われたが、「悪法もまた法なり」として死刑判決を受け入れ70歳でその生涯を閉じる。

田川
ソクラテス、人間を襲うクマをどうするべきか、答えが見つかりません。


ソクラテス
汝ら、森の獣を恐れる前に、自らの内なる獣を恐れたことはあるか?


田川
内なる獣?

……と言うと。


ソクラテス
うむ。

汝らは「クマが陣地を侵した」と嘆くが、そもそも「陣地」を定めたのは誰だ?

人間か、クマか、それとも自然 (ピュシス) か?

マタギの男が言っていたろう。

「境界線がわからなくなっている」と。

これこそが本質だ。

汝ら現代人は自らの欲望のままに山を切り崩し、樹種を自らの都合で植え替え、便利な箱 (街) を作り、そこを「安全地帯」と勝手に定義した。

だが、自然界にそのような線引きはない。

クマはただ、生きるためにそこにある実を食らうのみだ。


田川
では、私たちはどうすればよいのでしょう?


ソクラテス
名誉顧問ソクラテスの私ならこうする!

今こそ「無知の知」を知れ。

汝らは森のことも、クマのことも、そして自らが自然の中の「獣であることさえも知らない」ということを、知らねばならん。

汝らはマタギが言う、自らが自然の一部だということを知らぬのだ。

ただクマを恐怖し排除する (豪田) だけでは、スパルタの兵士が敵を殺すのと変わらん。

そして、愛でる (南) だけでは無知な子供が火遊びをするのと同じだ。

真の共生 (シンビオーシス) とは、互いの「徳 (アレテー)」を認め合うことにある。

クマの「徳」は強さであり森を育む力だ。

奴らの糞に含まれる種子が、他の地に花を咲かせ実りをもたらす。

人間の「徳」とは何か?

それは「知性 (ロゴス) 」と「節制」ではないか?

「節制」はマタギが言う「塩梅」に通づるかもしれん。

テクノロジーで支配するのではない。

自らの内なる「獣」を「節制」し、彼らの領域を侵さぬよう退く勇気を持つことだ。

マタギの行いを見よ。

彼らは命を授かるときでさえ、クマの魂を神へと返す「感謝という名の礼節」を持っておる。

汝らに必要なのは高性能な銃やテクノロジーではない、この「礼節」というフィロソフィア (哲学) なのだよ。


恐子
(恐子の表情が穏やかなそれへと戻る)

ふぅ……なんた今日は、マタギのしゃべってたごどと、似だような気するじゃ。

ありがたみねえば、うまぐいぐもんもいかねってごどだべ。

南部せんべい恵んでける自然、こしらえてける人さ感謝、感謝だのす……。

霧晴れて見えぬ道ここに現れん!
(問題が解決し進むべき道が開けたの意、恐子さんの決めゼリフ)


田川
ソクラテス、ありがとう。

恐子さん、ごちそうさま。

「自らの欲望を節制し退く勇気を持つ」

この言葉は重いですね。

クマの人身被害の問題は単なる害獣駆除の話ではありません。

それは、私たち人間がどれだけ自然に対し謙虚になれるか。

内なる「獣」を抑え退く勇気を持つ。

そして失われた「野生との距離」をどう再構築するか。

文明論的な問いでもありました。

熊野さんのマタギとしての生き方は、私たちが忘れていた「命の作法」を思い出させてくれたように思います。

私たちは命をいただいている意識が希薄になっているかもしれません。

もっと、野生と自然の恵みに感謝しなければいけない。

そして、直ちに行うべき安全対策 (豪田)、長い時間をかけて改善するべき環境対策 (南)

対立しているように見える豪田さん、南さんですが、双方の知見どちらも必要な車輪なのだとわかります。

片輪だけで車は走れない。

この両輪を回していくことが真の解決への道だと確信しました。

今日はここまで。

また来週お会いしましょう。


【参考文献リスト】


【参考Webサイト】



【ゲンカイモン総括】
ゲンカイモンです。

本日のテーマ「クマとの共生」いかがでしたでしょうか。

熊野さんの言葉には、我々が忘れかけている命への「感謝の念」を思い出させてくれる重みがあります。

そして、肯定派、否定派、それぞれの言い分がありました。

どちらも大事な両輪であると、さすが田川さん、洞察力がハンパない。

そして、私たち自身が、他の動物たちの命を奪う「獣」である……と。

これは本当に自覚できていない。

「いただきます」

「ごちそうさま」

この2つの意味を思い出すのが自覚する近道かもしれません。

命を授けてくれる動物、魚、穀物、野菜、果物に対する敬意。

これらを育て収穫してくれる人たち、収穫したものを運んでくれる人たち、食事を作ってくれる人たちに対する敬意。

双方を意識できれば、「感謝の念」が自然と湧き上がるはずです。

そして、マタギとイタコ。

2つの消えつつある伝承するべき文化が、奇しくもヒルガチで出会った。

日本の民俗学としてとても興味深いマタギ、改めて問い直す機会を設けたいと思います。

途中、パネリスト2人がヒートアップしましたが、田川さんが一喝、2人とも落ち着きを取り戻してくれました。

やはり田川さん、頼もしいですね。

肯定側、否定側双方が議論を通じ互いの価値観が認識できれば、必ず有意義な討論、ディベートに繋がります。

相手の価値観を尊重する、これは討論の大事な作法です。

今日のヒルガチがあなたの脳内に、ドーパミンを少しでも分泌させたと期待して番組を終わりたいと思います。

今週はこのあたりで失礼します。

次の金曜日にお会いしましょう。

ごきげんよう。

※追記
警察官:2025年11月13日からライフル銃を使った駆除が可能です
自衛隊:2025年11月5日に秋田県にて民生支援 (わなの運搬等) での派遣が実現しています


【予告】
来週は「民主主義は理想の制度なのか!」 を放送予定、どうぞお楽しみに。

【より深くヒルガチを楽しむために】
初めて訪問された方は「ヒルガチの歩き方」 をご覧ください。

【クリティカルシンキングを理解する】
クリティカルシンキングについて、「クリティカルシンキングを極める」 で解説しています。

【ゲンカイモン運営哲学】
なぜ、クリティカルシンキングスキルの鍛錬に討論が有効なのか? この答えは「ゲンカイモンの挑戦」 で詳述しています。

【免責事項】
本番組は正確を期すよう細心の注意を払い制作していますが、完全性、有用性を保証するものではありません。情報の利用により万一損害が生じた場合、筆者及びすべての本プログラム関係者は、一切の責任を負わないことをご了承ください。なお、特別にお断りしない限りすべての画像はAIで作成しています。イメージとして掲載していますが番組内容と直接の関係はございません。

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