【はじめに】
昼から生でガチバトル (ヒルガチ) は実在しない架空の番組です。本コンテンツの主人公、ヒトミさんとデモクラ教授はゲンカイモンが創作したキャラクターであり、実在する人物、団体とは一切関係ありません。ただし、民主主義に関する記述は参考文献を基に、正確性を期すよう細心の注意をはらい執筆しています。
ようこそ道場ヒルガチへ、ゲンカイモンです。
本日はいつものスタジオから飛び出し、神奈川県は鎌倉市へとやって来ました。
3回目のヒルガチの放送、おぼえていますか?
「民主主義は最善のシステムか?
意思決定機関としての国民の理想を考察する!」
福沢諭吉先生に参加していただき民主主義のメリット、デメリットを昼から生でガチバトルしてみました。
規定の枠では収まりきらず、3回目の放送にしてまさかの放送時間延長。
民主主義の奥深さを身に沁みて感じています。
あの放送で東さんがこう言いました。
「民主主義は放置すれば必ず衆愚政治に行き着く、この構造的欠陥から目を背けてはならない」という龍崎さんに対し、「それは民主主義の欠陥ではなく、民主主義が未成熟であることの証左」である……と。
民主主義が未成熟とはどういうことか?
放っておいてもいつか成熟するのか?
わからないなら徹底的に調べるしかない。
それが、今回の企画を思いついたきっかけです。
調べると様々な疑問が浮かんできました。
日本の民主主義は世界的に見るとどの位のレベル (成熟なのか未熟なのか) なんだろう。
そもそも、民主主義の定義とはなんだろう?
優劣はあるのだろうか?
あるとしたら何を根拠に決めるのだろうか?
これらの疑問に答えるべく、世界的に信頼できる3つの国際機関のデータを基に、各国の民主主義の成熟度を考察してみました。
そのためにあの人に声をかけてみたのです。
そう、あの人と言えば、私とヒルガチを歩いてくれたヒトミさん!
的確な質問で視聴者の疑問を代弁してくれる。
彼女しかこの大事な役目をこなせる人は他にいない。
そう確信した私は直ぐに連絡、ヒトミさんは快く承諾してくれました。
そして、デモクラ教授にこの企画を相談。
デモクラ教授は私が卒業した大学の歴史社会学の教授です。
現在は鎌倉市で趣味の読書を楽しみながら、奥様とゆったり過ごされています。
私の趣旨を理解していただき、2つ返事で引き受けてくれました。
役者は揃った。
現在と未来の日本の民主主義の課題を、ヒトミさんとデモクラ教授の質疑応答で徹底的に解説します。
実は簡単には答えられない世界の国の数
ヒトミ
始めまして、デモクラ教授。
ヒトミと申します。
民主主義について何でも知っている教授がいるから鎌倉へ行ってくれないかと、ゲンカイモンさんに頼まれてやって来ました。
海が目の前でとても素敵なところですね。
どうぞ宜しくお願いします。
デモクラ教授
やぁ、ヒトミさん、東京からこんな遠くまでよく来てくれたね。
疲れたろう、さあ、どうぞ、中へお入りなさい。
ゲンカイモン君から話は聞いているよ。
わかることなら答えるから何でも聞いてかまわないからね。
こちらこそ、今日は宜しくたのみますね。
ヒトミ
ありがとうございます。
さっそくですが教授、世界に民主主義の国はいくつあるんですか?
まったく想像ができません。
デモクラ教授
そうだね。
とてもよい質問だが、答える前に私からも質問だよ。
そもそも、世界にはいくつ国があるかわかるかな?
ヒトミ
てへっ、言われてみれば考えたことなかったです。
本来はそこから聞かなきゃダメですよね。
デモクラ教授
ははは……。
そうだね、でも、無理もないよ。
学校では教えてくれないからね。
国の定義はモンテビデオ条約などが関係するので、実は思いのほか複雑なんだ。
この条約の解説は別の機会に譲るとして、ここでは国連 (国際連合) に加盟している193カ国を基準に考えてみよう。
193カ国のうち、民主主義を採用している国が何カ国あるのか調べれば、ヒトミさんの質問の答えに近づくね。
ただし、これから紹介する3つの調査機関は独自の基準で対象国を選んでいるから、その数がそれぞれ異なる。
すなわち、国連加盟国数の193と同じにならない。
その点は留意して欲しい。
ヒトミ
へぇー、対象にする国の数が違うんだぁー。
なぜなんだろう?
デモクラ教授
その理由は後で解説するとして、もう1つ注意点がある。
ヒトミさんが民主主義をどう考えるかによって、この質問の答えが変わってくるんだ。
選挙があることだけを指すのか、それとも、市民の自由や政治の質まで含むのかで変わるということだね。
ヒトミ
えっ!?
そうなんですか?
てっきり、「〇〇カ国」と簡単に答えが出ると思っていました。
あっ、そうだ。
そもそも、民主主義の定義って何ですか?
基本から教えて下さい。
民主主義を定義する
デモクラ教授
えっへん、お安い御用!
お任せください。
民主主義のいちばん大切な考え方は、「国民が国のあり方を決める主役である」ということだ。
※リンカン大統領がゲティスバーグ (ペンシルベニア州) の演説で述べた、「人民の、人民による、人民のための政治」という言葉がその本質をよく表しているね。
※エイブラハム・リンカン (Abraham Lincoln 1809~1865):第16代アメリカ合衆国大統領、共和党。1865年凶弾に倒れるが、国家の統一と民主主義を守った大統領として、今でも多くの国民に尊敬されている。在任期間1861年~1865年
ヒトミ
その言葉、学校で習いました。
でも、意味まで深く考えたことなかったです。
デモクラ教授
それぞれの意味を説明しよう。
まず、「人民の政治」とは政府の権力は国民に由来する、すなわち国民主権のことだ。
次の、「人民による政治」とは政治は国民自身、もしくは国民が選んだ代表者が行うということ。
そして、「人民のための政治」とは政治は一部の人ではなく、国民みんなの利益のために行われるべきという意味なんだ。
ヒトミ
なるほど!
とてもわかりやすいです。
やっぱり国民が中心なんですね。
そこはイメージ通りです。
デモクラ教授
うん、そして、これらの理念を支えるための大事な原則が5つある。
原則1 : 国民主権
原則2 : 人権尊重
原則3 : 権力分立
原則4 : 法の支配
原則5 : 普通選挙
これら5つの原則は、健全に民主主義が機能するために必要不可欠な大前提なんだ。
ヒトミ
ふぅーん、たくさんの原則で民主主義は成り立っているんですね。
思っていたよりとても複雑!
デモクラ教授
そうだね。
現代の多くの国では、国民が代表者を選ぶ間接民主制が採用されている。
議会制民主主義とも呼ばれるね。
そして、これら5つの原則がどれくらい充足しているかで民主主義の成熟度が測れる。
世界の民主主義の成熟度を測る3つの国際機関
ヒトミ
はい、出たぁー!
ゲンカイモンさんが言ってた「成熟度」。
教授、この「成熟度」というキーワードのおかげで私、今、ここにいるようなもんなんですよ (笑)。
成熟度って言われると、なんだかフルーツの熟成みたいですね。
どうやって、食べ頃 (笑) を測るんですか?
デモクラ教授
ははは……、そうなんだね。
フルーツの熟成というのは上手い表現だ。
簡単に言うと、さっきの5原則をどれくらい満たしているかを数値化したものと考えればいい。
食べ頃ではないが、世界の国々の民主主義の成熟度を評価している、とても信頼性が高い国際的な物差しが3つある。
それぞれ異なる視点から5原則を考察しているから、これら3つの機関のデータを分析することで各国の社会状況がよくわかるんだ。
物差しは以下の3つ。
- EIU (Economist Intelligence Unit)
- フリーダムハウス (Freedom House)
- V-Dem研究所 (Varieties of Democracy)
順に解説しよう。
1. EIU
デモクラ教授
まず1つ目は、イギリスの ※エコノミストという雑誌の調査部門だ。
※エコノミスト:1843年9月、スコットランドの経済学者ジェイムズ・ウィルソンが創刊した週刊新聞
167の国を次の5項目で評価している。
・政治参加
・政治文化
・政府の機能
・市民の自由
・選挙プロセス
対象国が167と国連加盟国の193よりかなり少ないね。
この理由は対象国を選択する際に EIU 独自の条件があるからなんだ。
EIU に限らず、3機関の対象国の選択条件がみなそれぞれ異なる。
だから、国連加盟国の数と一致しない。
対象国の選択条件の解説は別の機会に譲るとして、ここでは触れずに進めて行こう。
ヒトミ
5項目もあるなんて評価項目が細かいですね。
どんなふうに評価されるんですか?
デモクラ教授
国を4つの段階で評価しているよ。
・完全な民主主義:24カ国
・欠陥がある民主主義:50カ国
・混合政治体制:34カ国
・権威主義体制:59カ国
ヒトミ
欠陥があるなんて、結構ストレートな表現なんですね。
デモクラ教授
そうだね。
広い意味での民主主義国は完全と欠陥を合わせた74カ国になるね。
日本や北欧の国々は完全な民主主義。
意外なことに、アメリカやフランスは欠陥がある民主主義の評価なんだ。
※本データは Democracy Index 2023 に基づく(2024年発表)
2. フリーダムハウス
ヒトミ
教授、2つ目は何ですか?
デモクラ教授
次は、アメリカにあるフリーダムハウスというNGO (Non governmental Organization) だね。
・政治的権利:40点満点
・市民的自由:60点満点
各々を評価、その合計点 (100点満点) で自由度をランク付けしている。
ヒトミ
今度は2つの観点なんですね。
評価はどうなっていますか?
デモクラ教授
合計点に応じて以下3つに分類している。
・自由:83カ国 (100点〜70点)
・部分的に自由:54カ国 (69点〜40点)
・不自由:73カ国 (39点〜0)
この分類では、自由と評価された83カ国が民主主義国に近いと考えられる。
ヒトミ
教授、対象国が210 (83 + 54 + 73) と国連加盟国の193より17も多いですね。
デモクラ教授
よく気がついたね。
EIU でも解説したけれど、フリーダムハウス独自の基準で選択しているからなんだ。
主権国家だけでなく、独自の政治システムや人的自由が確立された地域なども対象国としている。
195の国 (国連加盟国に台湾、コソボを加えた数) と ※15の地域を対象としているから210になるんだ。
※15の地域:アブハジア、ナゴルノ・カラバフ、北キプロス、ソマリランド、南オセチア、沿ドニエストル、クリミア、ドンバス東部、ガザ地区 (パレスチナ自治区)、西岸地区 (パレスチナ自治区)、西サハラ、香港、プエルトリコ、チベット、インド領カシミール
国連の枠組みにとらわれず実態に即した地域を含めることで、より現実に近い評価を目指そうとする努力がうかがえるね。
※ 対象国数は年によって変動する可能性あり
※ 本データは世界自由度報告2024に基づく
3. V-Dem研究所
ヒトミ
3つ目はどんなものですか?
ちょっと名前が難しそう。
デモクラ教授
スウェーデンの V-Dem 研究所だ。
ここは、さらに学術的な視点でとても細かいデータで評価している。
分類は4つ。
・自由民主主義 (Liberal Democracies):32カ国
・選挙民主主義 (Electoral Democracies):50カ国
・選挙権威主義 (Electoral Autocracies):60カ国
・閉鎖的権威主義 (Closed Autocracies):37カ国
対象国が179 (32 + 50 + 60 + 37) と国連加盟国の数と異なる理由は、EIU とフリーダムハウスと同じ。
この基準では自由民主主義、選挙民主主義を合わせた82カ国が民主主義国と見なせるだろう。
※本データは民主主義レポート2024に基づく
結局、民主主義の国の数はいくつ?
ヒトミ
なるほど。
3つの機関で民主主義国の数が少しずつ違うんですね。
でも、だいたい同じくらいの数に落ち着くのが面白いです。
デモクラ教授
そうだね。
まとめてみよう。
調査機関の評価から民主主義と見なされる国の数
・EIU:74カ国
・フリーダムハウス:84カ国
・V-Dem研究所:82カ国
いずれの機関もだいたい同じくらいの数に落ち着く。
ヒトミ
本当ですね。
最初の質問の答えにたどり着きました。
デモクラ教授
各機関によって多少差があるけれど、結論として民主主義と判断できる国がおおよそ75カ国から85カ国くらいだとわかったね。
各指標のトップ5と日本の評価
ヒトミ
教授、ありがとう!
民主主義の国の数はわかりました。
次に、これら3つの機関の上位国が知りたいです。
デモクラ教授
ほぉー、よいところに目をつけたね。
せっかくの機会だから、それぞれの上位5カ国を見ることにしよう。
ヒトミ
どの国が食べ頃 (笑) なんだろう?
ヨーロッパの国が強いイメージですけど。
デモクラ教授
そうだね。
それではランキングを見ていこうか。
ヒトミさんの予想が当たるかな?
1. EIU − Democracy Index 2023の評価
デモクラ教授
まずは EIU の評価から。
評価指数を Democracy Index の頭文字から DIと表記するよ。
完全な民主主義に分類された国々のトップ5はこうなっている。
DI (10点満点)
1位 ノルウェー:9.81
2位 ニュージーランド:9.61
3位 アイスランド:9.45
4位 スウェーデン:9.39
5位 フィンランド:9.30
ヒトミ
うーん、やっぱり北欧が強い!
それ以外ではニュージーランドが健闘しています。
日本の順位はどうなんですか?
デモクラ教授
日本は8.40で16位。
完全な民主主義に分類されていて、アジアでは台湾に次ぐ高い評価だよ。
でも、世界のトップ5には遠く及ばないね。
どの国も9点代だからね。
ヒトミ
16位でも十分すごいけど、トップグループじゃないのは何だかちょっと悔しいです!
9点以上取れないのは何故ですか?
デモクラ教授
5つの項目のうち、特に2つの点数が低いことが原因なんだ。
1つは政治参加だね。
具体的には ※投票率、特に若い世代の低投票率が評価を下げている。
※投票率
・第50回衆議院議員総選挙 (令和6年10月):全年代を通じた投票率 53.85%に対し10歳代 39.43%、20歳代 34.62%
・第27回参議院議員通常選挙 (令和7年7月):全年代を通じた投票率 58.51%に対し10歳代 41.74%、20歳代 35~41%
もう1つは政治文化だ。
政治家や政府への信頼が低く、政治に対して冷めた見方が強いと評価されている。
ヒトミ
うーん、耳が痛いです。
たしかに、私の周りでも選挙に行く人、少ない気が……。
それに、政治家のスキャンダルをニュースでたまに見ます。
デモクラ教授
そうだね。
一方、選挙プロセスや市民の自由という項目は、世界でも最高レベルの高い評価を得ている。
制度は素晴らしいが、「国民の政治への関わり方に課題がある」というのが日本への総合的評価だね。
2. フリーダムハウス − 世界自由度報告2024の評価
デモクラ教授
次はフリーダムハウスの評価を見てみよう。
自由と評価された国のトップ5は点数で見ると次の11カ国。
DI (100点満点)
同点1位
・スウェーデン:100
・ニュージーランド:100
・フィンランド:100
4位
・ノルウェー:99
同点5位
・アイルランド:98
・ウルグアイ:98
・オランダ:98
・カナダ:98
・スイス:98
・台湾:98
・デンマーク:98
※ 同点の場合50音順
ヒトミ
すごい、100点満点が3カ国も!
これでは日本が付け入る隙がありません。
日本はどう評価されていますか?
デモクラ教授
日本の総合点は96点で16位、もちろん自由に分類されている。
世界的に見ても高い水準だが上位が強すぎるね。
ヒトミ
96点でも十分だけれど減点された4点、何が足りないのか気になります。
デモクラ教授
フリーダムハウスが指摘している日本の課題は複数あるよ。
・難民の受け入れに消極的
・政府のメディアへの圧力の懸念
・政治や経済分野での女性の参加者が少ない
さらに、死刑制度の存在も減点の理由になっている。
3. V-Dem研究所 − 民主主義レポート2024の評価
デモクラ教授
最後に V-Dem 研究所を見てみよう。
評価指数を Liberal Democracy Index (リベラル民主主義指数) の頭文字から、独自に LDI と呼んでいる。
自由民主主義に分類された国のトップ5はこの国。
LDI (1点満点)
1位 デンマーク:0.89
2位 スウェーデン:0.87
3位 ノルウェー:0.86
4位 スイス:0.86
5位 エストニア:0.85
ヒトミ
エストニアが5位に!
IT が進んでいるイメージですけれど、民主主義も進んでいるんですね。
日本の順位はどうですか?
デモクラ教授
日本の LDI スコアは0.73で世界27位。
自由民主主義に分類されている、こちらも高い評価だよ。
でも、トップグループにはとてもではないが遠く及ばない。
ヒトミ
V−Dem では、日本のどんなところが課題だと評価されているんですか?
なんだか、だんだん日本の弱点が分かってきた気がします。
デモクラ教授
ほぉー、それはたいしたものだ。
V−Dem のデータを分析すると2つの点が浮かび上がってくる。
1つは熟議的要素の弱さ。
これは国会での議論が論理的な対話よりも、党派的な対立だと評価されていることを意味する。
もう1つは平等主義的要素の弱さ。
特に、※女性の政治参加が少ないことが大きな減点理由になっているんだ。
※女性の政治参加
・衆議院:73人で議員定数465に対する割合 15.7% (2025年12月現在)
・参議院:74人で議員定数248に対する割合は 29.8% (2025年12月現在)
ヒトミ
また、ジェンダーギャップ……。
どの機関からも同じことを指摘されているんですね。
これは深刻な課題だと実感します。
デモクラ教授
そうだね。
参議院は30%近くを女性が占めているので、以前と比べるとかなり進歩している。
ただし、衆議院の場合、他のG7諸国の割合、イギリス40.5%、フランス36.2%、ドイツ35.7%、アメリカ28.7%などと比較しても、15.7%ではまだまだその差は大きい。
日本は選挙制度のような “容れ物” は素晴らしいが、政治対話の質、実質的な政治参加に対する平等性などの “中身” のより深い部分で課題を抱えているという評価だね。
独自の民主主義指数 CDI! 3つの機関の総合ランキング
ヒトミ
教授、面白いこと思いつきました。
この3機関の指標を合わせたら、3団体統一チャンピオンが決まるじゃないですか!
デモクラ教授
とてもよい発想だ。
実は私も同じことを考えていたんだよ。
すでに計算してあるから、私が独自に算出した総合指数を見てみることにしよう!
ただし、学術的に確立された公式な指数ではないのでその点は注意してほしい。
総合指数の計算方法
デモクラ教授
まず、3つの機関は指数の満点数が異なるので、すべてを100点満点に換算し比較しやすくする。
この3つの平均点を総合民主主義指数の英訳、 Composite Democracy Index の頭文字から CDI と名付けよう。
1. 各 DI を100点満点に換算
・EIU の DI を10倍する
・フリーダム・ハウスは100点満点なのでそのまま
・V-Dem の LDI を100倍する
2. 平均スコアの算出
各国について上記3つの換算指数の合計を3で割る
算出計算式
CDI = (EIU 10倍 + FH + V-Dem 100倍) ÷ 3
3. ランキング
2で算出した平均指数が高い順に総合順位を決定する
CDI 世界ランクトップ5
デモクラ教授
これで制度の完成度、基本的な権利、政治プロセスの質がバランスよく評価できるだろう。
ヒトミ
CDI のトップ5はどの国ですか?
ドキドキしますね!
デモクラ教授
ふふふっ……、結果はこうなったよ。
| 順位 | 国名 | EIU | FH | V-D | CDI |
| 1位 | ノルウェー | 98.1 | 99 | 86 | 94.37 |
| 2位 | スウェーデン | 93.9 | 100 | 87 | 93.63 |
| 3位 | ニュージーランド | 96.1 | 100 | 84 | 93.37 |
| 4位 | デンマーク | 92.8 | 98 | 89 | 93.27 |
| 5位 | フィンランド | 93.0 | 100 | 84 | 92.33 |
【注意】
CDI (Composite Democracy Index) 及びランキングは、ゲンカイモンが独自に算出しランク付けしたものです。学術的に公認されたものではありません。
予想はしていたが、やはり北欧勢が上位のほとんどを占めたね。
V-Dem で5位のエストニアが総合順位では上位に入らないなど、各指標の特徴が表れている。
これらトップ5は民主主義の “中身” に関するあらゆる面で、世界をリードしていると評価してよいだろう。
世界主要国の順位と評価理由
ヒトミ
凄い!
やっぱり北欧は民主主義の優等生!
3位のニュージーランドは大健闘ですね。
日本や他の主要国はどうですか?
デモクラ教授
そうだね、詳しく見ていこうか。
日本以外では、同じ民主主義で選挙制度があるアメリカ、韓国。
そして、選挙制度がない代表として中国と北朝鮮について見てみよう。
| 順位 | 国名 | EIU | FH | V-D | CDI |
| 15位 | 日本 | 84.0 | 96 | 73 | 84.33 |
| 22位 | 韓国 | 80.9 | 81 | 72 | 77.97 |
| 28位 | 米国 | 78.5 | 73 | 69 | 73.50 |
| 145位 | 中国 | 21.2 | 9 | 4 | 11.40 |
| 157位 | 北朝鮮 | 10.8 | 3 | 2 | 5.27 |
※ 順位はおおよそ。総合スコアが近い国が多数存在するためわずかな差で順位が変動する
ヒトミ
うわぁー、日本は15位かぁー!
悪くはないけれど、やっぱりあと一歩という感じですね。
デモクラ教授
そうだね。
日本の評価をまとめると、自由で公正な選挙といった制度面では世界トップクラス。
ところが、国民の政治参加意識の低さ、ジェンダーギャップの大きさ、そして政治対話の質の低さなど、運用面や意識の部分にマイナス要因があるのでどうしてもスコアが伸びない。
これがトップグループとの差を生んでいる最大の要因と言えるだろう。
アメリカの評価
ヒトミ
アメリカが意外と順位が伸びません。
自由な国で「元祖民主主義」というイメージなのに……。
デモクラ教授
アメリカは民主主義の制度的な基盤はとても強い。
EIU が欠陥がある民主主義と評価する根拠は、深刻な政治の分極化や対立が政治全体の機能を低下させていることにある。
これが CDI を押し下げているんだ。
韓国の評価
ヒトミ
お隣の韓国はどうでしょうか?
デモが盛んなイメージがありますが。
デモクラ教授
韓国は国民の活動が活発で政権交代も実現する、アジアの代表的な民主主義国だね。
しかし、根深い汚職問題、保守と進歩の激しい対立による政治の不安定さなどが評価を下げている。
中国の評価
ヒトミ
中国のスコアが他の国と比べてものすごく低いです。
選挙制度がないからですか?
デモクラ教授
そうだね。
前半で触れた5番目の原則を思い出してみよう。
民主主義の理念を機能させるために必須な普通選挙だったね。
すなわち、国民が自由に政権を選択できる、複数政党制に基づく公正な選挙制度が中国には存在しないんだ。
すべての指標で、
・不自由 (フリーダムハウス)
・権威主義体制 (EIU)
・選挙権威主義 (V-Dem)
・閉鎖的権威主義 (V-Dem)
とはっきり分類されている。
1921年の結党以来 (中華人民共和国としては1949年から) 、※中国共産党による一党独裁体制が今も続いているからね。
※中国共産党:1921年7月上海で第1回党大会を開き創立。初代最高指導者は陳独秀 (ちん どくしゅう) 中央局書記
国民に政権を選ぶ自由はなく、表現の自由や報道の自由という基本的な権利も存在しないんだ。
北朝鮮の評価
ヒトミ
教授、北朝鮮はさらに低いスコアですよ。
もう、想像を絶する世界です。
デモクラ教授
北朝鮮は、ほぼすべての項目で最下位グループに位置している。
権威主義というより、※世襲制の全体主義体制だからね。
※世襲制:親子や一族の間で代々受け継がれていく制度
北朝鮮歴代最高指導者
・初代金日成 (キム・イルソン:在位期間1948年〜1994年) 朝鮮労働党総書記
・第2代金正日 (キム・ジョンイル :在位期間1994〜2011) 朝鮮労働党総書記
・第3代金正恩 (キム・ジョンウン:在位期間2011〜) 朝鮮労働党総書記
※彼らはみな親子
政治的権利や市民的自由は完全に奪われ、民主主義とは正反対の統治形態だから、指数が限りなくゼロに近くなるのも当然の結果と言えるだろう。
CDI の最下位国
デモクラ教授
参考までに北朝鮮の下に位置するのは一国のみ。
| 順位 | 国名 | 国名 | FH | V-D | CDI |
| 158位 (最下位) | アフガニスタン | 2.6 | 8 | 3 | 4.53 |
ヒトミ
えっー、北朝鮮よりさらに下の国がいるんですか?
ビックリ!
デモクラ教授
そうだね。
アフガニスタンは2021年のタリバンによる政権掌握以降、社会状況 (政治、経済、治安など) が著しく悪化した。
そのため、EIUの評価が北朝鮮 (10.8) よりも低く、2.6点と全世界で最も低いんだ。
このEIUの評価が全体の平均値を大きく引き下げたため、今回の CDI では北朝鮮よりも低いんだね。
ヒトミ
ありがとうございます、教授。
各国の評価は相対的なものだと、とてもよくわかります。
【重要事項】
アフガニスタン以外にも、シリア、ミャンマー、エリトリアなどの国々はどの指標においても「世界で最も自由がなく抑圧的な体制」として最下位グループを形成しており、その中での順位付けはわずかなスコアの差によるものです。アフガニスタンが最下位と断定的に捉えるのではなく、「世界には他にも民主主義や自由から乖離した国がまだまだ多くある」と理解することが肝要です。
デモクラ教授
ヒトミさんは飲み込みが早くて優秀だよ。
なお、各機関は評価の重点 (選挙プロセス、国民の自由、法の支配など) がそれぞれ異なる。
繰り返しになるけれど CDI は、あくまで私が独自に算出した参考値ということに留意して欲しい。
ただし、この CDI が各国の民主主義や自由度が世界の中でどのあたりに位置するのか、大まかに把握するための便利な判断材料にはなるだろう。
すべての国は民主主義途上国
ヒトミ
今日のお話で民主主義には色々な理念や原則があること、そして日本のよいところと課題がはっきりわかりました。
凄くよい勉強になりました!
デモクラ教授
そう言ってもらえるととても嬉しいね。
世界の民主主義国の数はどの物差しで測るかによるけれど、およそ75から85カ国とわかったね。
でも、大切なのは “容れ物” だけでなくその質、すなわち、“中身” なんだ。
ヒトミ
中身……ですね。
今日の話を聞いてその意味がよくわかりました。
デモクラ教授
素晴らしい!
ヒトミさんは理解が早いね。
今日の分析でわかるように、選挙という “容れ物” があるだけでは、民主主義の成熟度として高い評価は得られない。
市民の政治参加、ジェンダー間の平等、そして権力に対する監視機能などの “中身” が健全に進歩、発展したとき、初めて民主主義は真価を発揮する。
そういう意味では、日本を含めた多くの国々は理想の民主主義に向かい、常に “中身” を進化させる努力を継続するべき、“民主主義発展途上国” だと言える。
そして、この “中身” を成熟させるカギはヒトミさんはもちろん、我々国民一人ひとりが握っているんだ!
ヒトミ
うひゃあー、私たち一人ひとりが成熟度に関わっているなんて責任重大!
これからは意識して選挙に行くようにします。
少しでも投票率を上げて、日本の指数アップに貢献しなくちゃいけませんからね。
最後に、ゲンカイモンさんから預かったメッセージをお伝えしまーす。
今日の対談は1か月後くらいに特別番組としてオンエアするそうなので、絶対に見てくださいとのことです。
民主主義についてほんの一部でしょうけれど、教授のおかげでよく理解できました。
わからないことが出てきたら、またそのときは尋ねて来るので色々教えて下さい。
教授、本日は本当にありがとうございました。
デモクラ教授
どういたしまして。
今日の対談が少しでもヒトミさんと視聴者のみなさんの、民主主義に対する理解促進の役に立つならこんなに嬉しいことはないよ。
来月のオンエア、楽しみにしていると、そして、「また哲学を肴に一杯やろう」とゲンカイモン君へお伝え下さい。
【参照データ】
・Economist Intelligence Unit (2024). Democracy Index 2023: Age of conflict.
https://www.eiu.com/n/campaigns/democracy-index-2024/
・Freedom House (2024). Freedom in the World 2024: The Mounting Damage of Flawed Elections and Armed Conflict.
https://freedomhouse.org/report/freedom-world/2024/mounting-damage-flawed-elections-and-armed-conflict
・V-Dem Institute (2024). Democracy Report 2024: Democracy Winning and Losing at the Ballot.
https://www.v-dem.net/publications/democracy-reports/
【Webサイト】
・総務省統計局 「国政選挙の年代別投票率の推移について」https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/
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